新型コロナウイルス感染症という試練

愛子内親王は皇室の一員として生まれ、そのまま天皇の娘としての生活を送ってきた。その境遇は、ローマを訪れるまでのアン王女と重なる。

では、愛子内親王に、アン王女が乗り越えたような試練はあったのだろうか。その朗らかな印象からは、まっすぐに育ってきたように見える。

映画『ローマの休日』で「アン王女」を演じたオードリー・ヘップバーン
映画『ローマの休日』で「アン王女」を演じたオードリー・ヘプバーン(写真=PD US no notice/Wikimedia Commons)

だが、愛子内親王は、2019年末からはじまった新型コロナウイルスの感染拡大という状況のなかで大学生活を送っている。それは、その時期に学生生活を送った若い世代全体の試練となったはずで、愛子内親王も例外ではなかった。

愛子内親王の場合、2020年3月に学習院女子高等科を卒業し、4月から学習院大学文学部日本語日本文学科に入学している。

私もその時期、東京女子大学で非常勤講師として教えていたが、4月になってもすぐに授業ははじまらず、5月のゴールデンウィーク明けから、ようやくZoomによるオンライン授業がはじまった。対面に戻るのは1年半後の2021年10月からである。

学習院大学で対面授業に戻ったのは2022年5月からと東京女子大より遅く、その後もオンライン授業が併用された。愛子内親王が対面での授業を受けるために大学に通うようになったのは23年4月からのことで、すでにその時点で4年生になっていた。

愛子内親王が詠った和歌の真意

私のような非常勤講師には、大学に行く必要のないオンライン授業は楽だった。しかし、学生にとっては相当に過酷な環境であったはずだ。学習の成果については、オンラインで十分だったという研究もあるようだが、キャンパス・ライフがないわけで、友達作りに苦労したという学生の話は当時よく聞こえてきた。その影響が今に及んでいることもあるだろう。

愛子内親王が、2024年の歌会始で披露した「幾年の難き時代を乗り越えて和歌のことばは我に響きぬ」(お題は「和」)は、おそらくはそうしたコロナ禍で経験した難しい状況を詠ったものであろう。

また、今年の歌会始の「我が友とふたたび会はむその日まで追ひかけてゆくそれぞれの夢」(同「夢」)には、コロナ禍を経て、友というものを持つことの重要性を改めて認識したことが詠われているように思われる。

2020年に大学に入学した世代は、コロナの流行によって、もっとも影響を受けた世代である。私の娘は翌年に入学しており、それと比較しても、大変な体験だったことがわかる。