認知症の進行を遅らせるだけで、改善はしない
私がここで強調しておきたいのは、現在ある認知症の治療薬は、効果があったとしても進行を先送りするだけでしかないということです。現時点では認知症を予防したり、改善したりする薬は開発されていません。
例えば、高血圧の治療では合併症である脳卒中や心不全が起きるのを先送りできれば、その分、元気な期間を長くする効果があります。しかしながら、認知症の先送りは徐々に物忘れが進行する苦しい時間を長引かせるだけです。患者さんにとっては多大なストレスが増えるだけですから、本当に理不尽な治療であると私は考えています。
本人は「ああ、また忘れるようになってきた」と苦しみ、家族など周囲の人々も「私のこともだんだんわからなくなってきた」とつらい思いをする。認知症が進行していく現在の苦しみに対して、薬では解決できません。そこで何が患者さんや家族の希望につながるかというと、忘れても大丈夫、認知症のままでも楽しく生きられるという方向性を目指していくしかありません。「ぼけをことほぐ」社会を、本人と家族、医療者が見つけ出していくことが何より肝要です。
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