世界経済は、欧州危機を前に、ますます混迷の度を深めている。このような不透明な時代には、どのような資産が頼りになるのか。ビジネス界の重鎮が、効果的な「お金」の増やし方を指南する。

「バルチック海運指数」で先読みする

堀 紘一氏

お金を増やすにはもう1つの方策がある。お金がお金を増やすという道(利殖)だ。個人的には、あまり好きなやり方ではない。付加価値を生むのはあくまでも人間の労働であって、マネーや地下資源ではないというのが私の信念だからである。

とはいえ、資本主義の世に生きている以上、投資によって利潤を得るという行為を頭から否定するべきではないだろう。簡単に分類すると、投資には次の4種類がある。

1つは、事業への投資である。自分で事業や会社を立ち上げる場合と、株式を買うことで他人の会社に投資をする場合の2通りである。

2つ目は不動産投資だ。これにもアパートを直接所有して収入を上げるというやり方と、リート(REIT=不動産投資信託)などの形で証券化したものに投資するというやり方がある。

3つ目は債券投資。これは格付けが高く比較的安全とされる国債から、ジャンク債と呼ばれるハイリスク・ハイリターンの債券までさまざまだ。

4つ目は、商品投資。これにはいろいろな種類がある。代表的なものは金、白金、銅、原油、とうもろこし、大豆、小麦などだ。

いずれにしても、何に投資するかは「リスク・リターンの関係」で決まってくる。きわめて単純化していえば、リスクとリターンとを比較してリターンの大きな投資先を探し出し、そこへ投資するということだ。

割安な投資先を見つけるには、経済の動きを自分なりに咀嚼したうえで、先読みをする必要がある。そのとき役に立つのは、たとえば世界の不定期船の動きを示す「バルチック海運指数」である。

同じ貨物船でも、定期船なら荷物がなくても週に1回とか月に1回のペースで就航するが、不定期船は荷物がなければ動かない。バルチック海運指数を見ると、現時点で物流量が多いか少ないかがわかるのだ。直接的には船の動きだが、船で運んだ物は陸でも運ぶ。だから、この指数は物流全体を反映しているともいえるのである。

バルチック海運指数は、およそ3カ月後の世の中の動きを映している。指数が上昇し、物の動きが活発であるということは、将来景気がよくなることを意味している。同じように、JALやANA、東海道新幹線の搭乗率を観察していれば、国内景気の動向が見えてくる。