塾が禁止になったら、夜間にスポーツをさせる韓国の保護者たち

日本と韓国の受験戦争は似ているが、韓国のほうがより過酷だ。コリア・タイムズによると、86%の韓国の小学生が塾や予備校に通っているという。一方、チャイルド・ネット・リサーチ(CNR)のレポートによると、日本の小学生の通塾率は平均30%ほどだが、小2から小6にかけて塾に通う子どもが増えていき小6になると43%に届く

イ市議は韓国の塾事情について次のように説明する。

「韓国政府は、私教育よりも公教育を優先しようと努力してきました。例えば、夜10時以降の塾、そして学年をはるかに超えた内容を教えることを禁止にしました」

しかし、これが正反対の結果を生んだ。夜の塾が禁止になると、保護者は代わりに子どもをスポーツなど塾ではないお稽古事に行かせるようになったのだ。

金敬哲(キム・キョンチョル)氏が書いた『韓国 行き過ぎた資本主義』は、政権がころころ変わり、その度に教育政策が変わる政治的不安定さが人々をますます不安にさせ、「信じられるのは自分のみ」と、韓国の親たちは学歴にすがるようになったと分析している。小学校5年生で高校1年生の数学を先行学習し、1日2、3軒の塾を回る子どもたちもいるという。

勉強している小学生
写真=iStock.com/koumaru
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ファイナンシャル・タイムズによると、現在、6歳未満の子どもたちの半数が塾に通っているという。

「塾産業があまりにも確立されているため、韓国政府は塾産業をつぶすのは不可能だと理解しました。また、働く親が増えたことで、塾が放課後の子どもの居場所にもなっており、もはや子育ての一部として機能しています」(イ市議)

韓国政府は塾産業を排除するよりも「塾と共生する」方向へ舵をきり、塾における生徒の安全確保などに力を入れるようになった。

日本と韓国は、家庭の経済力によって受けられる教育の質に格差が生じ、「教育の機会均等」が損なわれている。日本語の「親ガチャ」という言葉もこのような不公平感から生まれた。このような社会は、若者から将来の希望を奪う怖れがある。