初代の1.5倍の価格でも「安い」の声
2025年、ついに発表された任天堂の次世代ゲーム機「Nintendo Switch2」。注目の価格は、日本語版が4万9980円(税込)、そして多言語対応版はより高い価格設定(6万9980円)となっており、国や地域によって価格が異なる「二重価格」が採用されています。
初代Switchが2017年に3万2378円(税込)で発売されたことを考えると、Switch2はおよそ1.5倍の価格。かなり強気な値付けとも思えるこの価格設定に、発表直後はSNSやメディアも騒然……かと思いきや、意外にも「高すぎる!」という声はあまり見かけませんでした。
むしろ、「このスペックで5万円なら安い」「円安の中、国内価格を抑えてくれてありがたい」といった、ポジティブな声が目立ちました。
この背景には、日本語版だけ価格が抑えられているという事実や、海外価格(多言語版)が基準となって割安に見えるアンカリング効果も影響していると考えられます。
そんな話題沸騰中のSwitch2のプライシングですが、もちろん単なる「コスト増の反映」ではありません。よく見ると、任天堂らしい緻密な戦略が詰まっているのです。
本稿では、Switch2の価格設定に隠された複数の狙いを読み解きながら、プライシングの奥深さ・面白さを一緒に考察していきます。
二重価格は任天堂にとっておいしい
今回のSwitch2で注目すべきポイントのひとつが、「日本語版」と「多言語版」で価格が異なる、いわゆる二重価格の採用です。一見すると「同じ製品なのに価格が違うなんて、不公平じゃないの?」と感じられるかもしれませんが、価格戦略の観点から見ると、これはとても合理的で、理にかなった選択です。
価格を一律にしてしまうと、「高くても払う人」からは本来得られるはずの利益を取り逃がすことになり、「この価格じゃ買えない……」という人にはそもそも販売できない(数量の機会損失)ということが起こります。
一方で、二重価格をうまく使えば、
・高く払える層には高く売ることで、利益を最大化
・価格に敏感な層には低価格で販売し、販売数量を最大化
という、収益の総取りが可能になるのです。
しかしながら、この二重価格という手法、消費者に“印象の悪さ”を与えやすいという側面もあります。「自分が損しているのでは?」という感情を持たせてしまうと、いくら理屈が正しくても支持されにくいのが現実。だからこそ、多くの企業はこの手法を“知っていてもあえて使わない”ことが多いのです。