なぜ多額の投資が逆効果になってしまうのか
もちろん、「予算を増やしたせいで出生数が減った」などとは言いませんが、予算だけがものすごい勢いで増えているのに子どもの数は減り続けているという事実を見ると、果たしてこれは少子化対策として機能しているのかと誰もが思うでしょう。これだけ取り出しても「予算増やせば少子化は解決」などと言う理屈は成立しません。
民間会社における事業プロジェクトにたとえるなら、予算をこれだけかけてかえって売り上げが減っているなら大失敗でしょう。プロジェクトそのものが設計ミスであり、即中止の上、リーダーはお役御免です。
勘違いしないでいただきたいのは、何も子育て支援を否定したいのではないということです。それはそれとして別軸でやるべきことですが、それを充実させたからといって少子化は改善されないということです。
そもそも子育て支援という言葉ですが、本当に支援になっているでしょうか?
予算として増えている以上、何かしらの支援は増えていることは事実です。しかし、それらは必ずしもすべてが直接的に子育て世帯に対して給付されるものではなく、就学前児童保育などサービスという形で提供されています。実態として、給付やサービスという形で子育て世帯は何かしらの恩恵を受けているはずですが、当の子育て世帯は、予算3倍と言われても「そんなに恩恵があるとは思えない」と感じているでしょう。
本稿では便宜上、直接的な支援である児童手当などの給付について取り上げたいと思います。
片手で給付、もう片手で回収する巧妙さ
家計調査から2000年~2024年までの推移で、これら児童手当などの給付がどれくらいあったかを推測します。家計調査には児童手当給付の項目はありませんが、年金以外の、「その他の社会保障給付」がそれに充当します。厳密には、この中には児童手当に加えて、児童医療補助、出産手当も含みます。
世帯主が34歳以下と35~44歳の2人以上世帯において、この給付の推移がどうだったかに加えて、税金や社会保険料など収入から引かれる国民負担金額とそれらふたつの給付と負担の差し引き額がどう変化したかを示したものが図表2のグラフです。2000年を基準として、それぞれがどれくらい金額として増減したかを表しています。