34歳以下の若い世帯も実質的に損している現実

まず、34歳以下の若い夫婦世帯で見ると、年齢的に子どもはまだ幼児期の世帯が多いと推測されますが、給付は2010年あたりを契機に一度大幅に増え、さらに2016年以降も増えるという二段階増加となっています。

しかし、それと若干タイミングが遅れて、税・社会保険料の負担額も同様に増加しており、2024年では給付と負担の金額はほぼイコールです。つまり、「給付はされるがその分そっくり税・社保料として持っていかれている」ということになります。差し引き金額で見ても、2020年以降は、給付よりも負担のほうが上回っている傾向です。

【図表3】給付と負担推移(35~44歳世帯主)

35~44歳世帯では、給付以上に負担のほうがより大きくなり、2024年では給付として月1.4万円増となっているものの、負担は2.4万円増で、給付分以上に負担額が増えていることがわかります。

「なぜか生活が楽にならない」と感じる不思議

当然、税・社保料の中には子育て支援と無関係のものも含みますが、少なくとも「子育て支援だ。給付拡充だ」などとメリットのように思える言葉の裏で、子育て世帯が実際に享受できる金額はもろもろ合算するとさほど変わらないか、むしろ減らされていることになります。

決して皮肉ではなく、このあたりが官僚の優秀なところで、政治家が「子育て支援で給付します」と人気取りのようなことをやっても、その分は確実に回収する仕組みを同時に走らせていることです。

サラリーマンの方は給与明細を隅々まで見ている人ばかりではないでしょうし、「子育て支援で給付があった」と喜んだにもかかわらず「なんか生活は楽になっていないな」と感じるのはこういうカラクリがあるからです。

生活費を考える日本人カップル
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むしろ、子育て支援の名の下で、こうした給付がなされていても、実質世帯の手取りが増えていない状況こそが、少子化をさらに推進してしまうという逆効果を生みます。

そもそも生まれた子に対する手当が新たな出生を促進する効果はほとんどありません。その名の通り、子育て支援なのですから、「支給されたお金は新たな出生意欲に向けられるのではなく、今いる子の投資に向けられる」のは当然ですし、事実そうなっています。