確かに国の制度として、被災者生活再建支援制度もある。その対象となる被災世帯は、(1)住宅が全壊した世帯、(2)住宅が半壊または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむをえず解体した世帯、(3)災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯、(4)住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯と定められている。支援金は全壊のケースで最高300万円であり、建て直し費用をカバーするのには不十分だ。
それでも、保険料がばかにならないというのなら、もう一度リスクマップを手元に置き、発生頻度が高いものの、リスク自体は低い分野の保険を見直そう。実はここで俎上に載せなくてはならないものがガンの手術や入院費などを保障する医療保険だ。「もしものことを考えて……」という生命保険会社のセールスレディーたちの甘い言葉に惑わされて、つい加入してしまう人が多い保険でもある。
読者のみなさん、冷静に考え直してみてほしい。社会保険には高額療養費制度があって、一定額以上かかった医療費については払い戻される。年齢や収入によって計算方法が変わってくるが、70歳未満の一般の人が1カ月で20万円医療費がかかった場合、その自己負担は8万4096円で済む。
医療保険は割に合わない!?
また、入院して手術というようなことは一生に何度もあるわけではない。それにもかかわらず、日額1万円を保障する医療保険に入っていると、その保険料の支払総額は200万~300万円にもなる。たとえ手術で60日間入院して80万円の保険金をもらえても、割に合わない計算ではないか。むしろ、一度の被災で何百万円、何千万円の被害をカバーする地震保険の必要性のほうが10倍も100倍も高いとはいえないだろうか。
最後に、地震保険には2つのタイプがあることを覚えておいてほしい。損害保険会社が扱っているものと、全国共済農業協同組合連合会(JA共済)や全国労働者共済生活協同組合連合会(全労災)の共済が扱っているものに分かれるのだ。
前者の地震保険の支払いは1150億円まで損保会社が負担し、それを超えた額は国と折半する。さらに官民合わせた支払額が1兆9250億円を超えるような場合には、その超過額の95%を国が負担してくれるので安心だ。一方、共済系の地震保険は保険料でファンドを組み、それを保険金の原資に充てるため、イザというときにカバーできるのか注意しておく必要がある。
山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーに。「家計の見直し相談センター」では、2001年の設立以来1万3000世帯を超える家計の相談を受けてきた。