データを見ればわかるロシアの本音

1月14日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は首都モスクワで年頭の記者会見を行った。その際、20日に就任した米国のドナルド・トランプ大統領が、ロシアとウクライナの戦争の停戦に意欲を示していることに対して、トランプ大統領との対話に前向きな姿勢を示した。ロシアもまた、ウクライナとの戦争で停戦を強く意識しているようだ。

2024年10月15日、Fox News Town Hallに出席するドナルド・トランプ米大統領(左)と、2024年10月24日、カザンで開催されたBRICS首脳会議で演説するロシアのプーチン大統領(右)
写真=AFP/時事通信フォト
2024年10月15日、Fox News Town Hallに出席するドナルド・トランプ米大統領(左)と、2024年10月24日、カザンで開催されたBRICS首脳会議で演説するロシアのプーチン大統領(右)

ロシアが停戦に前向きな姿勢を示す理由の一つに、財政の疲弊があると考えられる。ロシアの財政収支そのものは、最新2024年7~9月期で名目GDP(国内総生産)の0.6%の赤字にとどまっており、最悪期である23年4~6月期(4.5%)に比べても赤字の是正が進んでおり、一見、健全化している。しかし、その裏側には様々な変化がある。

【図表1】ロシアの財政収支
(注)4四半期後方移動平均(出所=ロシア連邦財務省、同統計局)

ロシアは2022年2月にウクライナに侵攻したが、その直後より、歳出の内訳の公表を停止した。そのため、歳出のどの程度が軍事費であるかは不明である。一方で、25年の予算では、軍事費は歳出全体の3割にも膨らんでいる。これに国内の治安対策用などの国家安全保障費を加えると、歳出の4割が軍事関連の支出となる異常事態である。

つまり、歳出に占める軍事費の比率は着実に拡大している。一方で、歳出の規模そのものは名目GDPの20%程度で横ばいだから、ロシア政府は軍事費以外の費用を切り詰めることで、軍事費を何とかねん出していることになる。他方で歳入は、頼みの綱である石油・ガス収入が増えないため、政府は2025年から増税を強化せざるを得なくなった。