「一遍に大量の民意を固定してしまう」

6日の年頭記者会見では、一連の衆院解散、大連立もテーマになった。石破首相は、内閣不信任決議案が可決された場合の対応について「衆院の意思と内閣の考えが違った時に主権者の判断をいただくことは憲政の常道だ、と述べたに過ぎない」という見解を改めて示した。この点は森山氏や林氏ら政権幹部との合意があってのことだろう。

首相が強気なのは、先の衆院選で「衆参予算委で私が全部答弁して解散していれば、そんなに負けなかった」という思いがあるほか、選挙戦終盤に非公認組の党支部に2000万円を配布した問題が報じられ、20議席程度は負けが込んだとされたことから、この次は議席が回復できると計算しているためらしい。

衆参同日選については、平時ならご法度だろうが、首相周辺は「参院選で仮に負けたら、衆院に内閣不信任決議案を出されてどうせ解散になる。それなら、野党が候補一本化できないことを見込んで衆参ダブル選挙を仕掛けるという考えだ」とその意図を説明する。

だが、公明党は衆参同日選など論外という立場だ。山口那津男元代表は8日、石破首相と首相官邸で会談した後、記者団に「同日選は憲法が予想しているところではない。一遍に大量の民意を固定してしまうやり方は望ましくない」と述べ、否定的な考えを示した。

斉藤鉄夫代表は6日、党の仕事始め式で、12年に1度の巳年、東京都議選(6月29日投票)と参院選(7月26日投票)を同時に迎えるに当たって「ここで勝利することしか、公明党の再生はない」と強調した。

都議選の趨勢は参院選に直結するが、今回は都議会自民党会派の政治資金パーティー収入をめぐって、一部の都議が正しく収支報告書に記載しなかった問題が判明し、自民党への逆風も予想される。衆院選を含めたトリプル選挙はなかなか想定しづらいのが現状だ。

国会議事堂
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「自民と立憲民主党の大連立をやろう」

大連立構想については、石破首相は6日の記者会見で「今の時点で、大連立を考えているわけではない」とトーンダウンさせた。

首相が元日の文化放送番組で「中道政治を目指し、相通じるものがある。長い友人で信頼でき、裏切られたことが一度もない」と語っていた野田氏、日本維新の会の前原誠司共同代表が4日の記者会見で否定したため、軌道修正を図ったものだ。ただ、「選択肢としてある」との発言については、「そういう可能性はあるということを申し上げた」とし、可能性には含みを残した。

大連立については、2007年に当時の福田康夫首相が衆参ねじれ状態を打開しようと、渡辺恒雄読売新聞グループ本社主筆と斎藤次郎元大蔵次官の仲介で、民主党の小沢一郎代表(現・立憲民主党衆院議員)と協議を重ねたが、最終的に民主党内の了承が得られず、頓挫したことがある。

後藤氏は、1月6日のテレビ朝日の番組で、石破首相に大連立を進言したのは、12月7日に国会近くのホテルで密かに会食した亀井静香元建設相だと明かしたが、その前段の裏話を山崎拓元自民党副総裁が1月6日の現代ビジネスでこう語っている。

「先日、小沢氏が私と亀井静香氏の誕生会を開いてくれた。その席で小沢氏と『自民と立憲民主党の大連立をやろう』という話で盛り上がったが、亀井氏は『それはダメだ。野党でまとまり、国民民主党の玉木雄一郎を総理にすべきだ』と主張して、小沢氏と口論になっていた(笑)」

首相や亀井氏らがどこまで本気なのか不明だが、小沢氏の口から「大連立」という言葉が発せられたのは興味深いところだ。

自民党の木原誠二選挙対策委員長は5日、フジテレビ番組で、大連立について、参院選に絡めて「どんな民意が示されるかでいろいろな可能性があるのではないか」と述べた。

与党としては政権を維持するなら、参院選(または衆参同日選)後の大連立まで否定したわけではなく、あらゆる可能性を排除しないということなのだろう。

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