水面下で模索してきた生き残り策が浮上

テレビ離れなどで経営難にあえぐ民放ローカル局の再編がついに始まった。

口火を切ったのは、日本テレビ系列(NNN、30社)の札幌テレビ、中京テレビ、読売放送、福岡放送の4基幹局で、2025年4月に新たに設立する持ち株会社の下に経営統合することになった。

2024年6月1日、日本テレビ(東京都港区)
写真=時事通信フォト
2024年6月1日、日本テレビ(東京都港区)

将来の不安に苛まれるローカル局は、水面下でさまざまな生き残り策を模索してきたが、具体的な形になって浮上した初めてのケースで、放送界には大きな衝撃が走った。ローカル局の存亡は放送界が抱える当面の最大の難題だけに、4局統合の波紋は北海道から沖縄まで全国に及びそうだ。

だが、ローカル局の内情は、外から見ているよりずっと複雑だ。利害関係者の思惑や打算が交錯し、だれもが納得できる妥協点を見つけるのは容易ではない。後で詳述するが、「地元有力紙vs.全国紙」の新聞社バトルや、「総務省vs.経済産業省」の省益争いも見え隠れし、事態をより複雑にしている。

「ローカル局再編の号砲が鳴った」という声は聞こえてくるものの、直ちに新たな動きが顕在化するかというと、そう単純にはいきそうにないからもどかしい。そこに、ローカル局の苦しみと悩ましさがある。

このため、ある有力ローカル局の幹部は「当面は静観」と様子見の構えで、テレビ局員も「現場に動揺はない」と言う。

ただ、地域メディアの行方は地域の経済や暮らしに直結するだけに、ローカル局の明日は視聴者にとっても他人事ではいられない。

日本テレビHDを頂点としたピラミッド構造

新設する認定放送持ち株会社は「読売中京FSホールディングス(FYCSHD)」と名づけられた。NNN系列の4基幹局は、持ち株会社の完全子会社となる。

日本テレビホールディングス(HD)が20%以上の株式を保有して筆頭株主となり、約15%の株式を持つ読売新聞グループが第2位の株主となる。会長には中京テレビの丸山公夫会長、社長には日本テレビHDの石沢顕社長が就く。

経営統合の狙いについて、日本テレビHDは「持ち株会社の下で、経営基盤を安定させ、将来にわたり良質な情報や豊かな娯楽を安定的に視聴者に提供し、地域社会に貢献するという社会的責務を果たしていく決断をした」と説明。番組、配信コンテンツ、アプリの共同開発に取り組み、新規事業への投資や海外へのビジネス展開も図っていくという。