移動に伴う健康問題を扱う渡航医学

ときに、読者諸兄は「トラベル・メディスン」、あるいは「渡航医学」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

私は感染症専門医であるが、同時にトラベル・メディスンの専門家でもある。この領域の「バイブル」といえるジェイ・キーストンの『キーストンのトラベル・メディシン』(2014)など、複数の専門書を訳出したこともある。トラベル・メディスンは、植民地をたくさん持っていた欧州諸国や、移民の多いカナダなどで発展してきた。

「トラベル」=旅行とは限らない。それは「赴任」だったり「留学」だったり、「移住」だったり、あるいは「亡命や避難」だったりする。奴隷貿易時代の奴隷の強制移住も一種の「トラベル」だ。