「住みたい街」上位から消えた街の共通点

それはともかく、このデータを時系列で見ると面白い傾向がわかってくる。2010年における同じ調査で上位にランキングされた街が、2024年の順位ではどうなっているか比べてみよう。

2010年にはベスト10に自由が丘(3位)、二子玉川(5位)、下北沢(9位)がランクインし、代官山(11位)がこれに続いている。ところが、2024年には最高でも自由が丘の27位であり、ベスト20にすら一つも入っていない。〈図表2〉

SUUMO「住みたい街ランキング2010」上位20エリアの順位変化
出所=『家が買えない
牧野知弘『家が買えない 高額化する住まい商品化する暮らし』(ハヤカワ新書)
牧野知弘『家が買えない 高額化する住まい商品化する暮らし』(ハヤカワ新書)

これらの街はいわゆるおしゃれタウン。今でもそのブランド力は健在ではあるものの、この十数年の間に、ブランド品を追いかけ街を歩く人の姿はずいぶん変貌した。

最近の若い人たちの間では、自由が丘や代官山でお洒落のために少し高い服を買う、といった消費行動そのものが消滅しつつあるのだ。ファストファッションで決して恥ずかしいとも思わないし、普段着はユニクロでかまわない。家具は小洒落たブランド家具でなくても、ニトリで十分。フランフランでこだわりのキッチン雑貨をそろえなくてもよい。

むしろ「ららぽーと」があればよいのに、と多くの若い人たちは思う。豊洲のタワマンに住んで週末はららぽーとでお買い物、こちらのほうが合理的で現代の生活にフィットしているのだ。

住み心地より交通の利便性が重視されている

そうした目で2024年のランキングをもう一度見ると、会社に通勤するのに一番便利だろうなと思われる「JR主要幹線の主要駅」が人気という、何とも味気のない選択がされているように思えてくる。

こうした調査を見るにつけいつも感じるのが、多くの人たちが選ぶ住みたい街が、単なる通勤の利便性を最優先にして考えられているように見えることだ。自身の人生観、家族観、生活そのものに対する価値観といった要素を、どうもこれらのランキングから感じ取ることができない。

コロナ禍を経て、必ずしも毎日通勤をすることが必要ではない業種・職種が特定化されつつあるなかでも、「通勤ファースト」の価値観は揺るがないどころか、ますます強まっているように思えてくる。

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