「食糧危機が来てから食べればいい」への反論

苦い経験をした渡邉社長に、今後どうするつもりなのか尋ねると、「リベンジしようと思っている」という予想外の答えが返ってきた。

「すべては私の実力不足ですが、グリラスに起きたことには納得していません。今は一度撤退しますが、次こそは炎上に負けないビジネスモデルを構築します。まずは家畜やペット用のコオロギ商品で会社の経済的基盤を確立して、2050年ごろまでに人向けの食品も流通させたいと思っています」

あくまでコオロギ食にこだわる理由は何か。そこには「コオロギを食べたくない人が食べなくていい未来を作る」という思いがある。

「われわれのミッションは、食糧危機が来るまでに、昆虫食への抵抗がない人を増やしておくことです。タンパク質需要の一部がコオロギに流れれば、牛・豚・鶏肉の価格高騰は抑えられる。よく、『コオロギは食糧危機が来てから食べればいい』と言われますが、食べたくないものを食べざるを得ないのは、不幸な昆虫食の未来です。私も当初は虫を食べることに抵抗がありましたが、そういう人たちが『おいしいから』と気軽にコオロギを手に取るようになれば、食の自由が保障された未来を作れるはずです」

社会に広がってしまったコオロギへのネガティブイメージを払拭(ふっしょく)することはできるのか。少なくとも、渡邉社長の目には不屈の意志が宿っていた。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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