サンパチマイクと身体の位置関係にもコツがある
2023年のM-1後に、僕のSNSには「令和ロマンのくるまさんに、石田さんっぽさを感じました」という声がいくつか届きました。ただ僕自身は、そこまで似てないんちゃうかなと思っています。
まず、くるまくんのほうが、圧倒的に能力値が高い。いかにも「芸人」という感じの野心もある。何を取っても僕とは全然違います。
あと、くるまくんは、ものすごい勉強家でもあります。以前、僕がお笑いについて語ったり、若手のネタにアドバイスしたりするトークライブをやったんですが、くるまくんは忙しいなか見に来てくれました。それだけではなく、楽屋にまでやってきて、いろいろ質問をしてくれました。そのときは、漫才の「身体論」について話した記憶があります。
それはどういうことかというと、マイクと自分の位置関係についてなどです。
多くの漫才師は、サンパチマイクの高さを自分の口元あたりにくるようにします。
当然ですが、ちゃんと自分たちの声をマイクに拾ってもらうためです。また、カメラは真正面から自分たちを捉えているので、絵的にも、そのほうがいい。
だけど、客席は舞台より低いので、お客さんは下から自分たちを見上げる形になります。すると口元の前あたりにあるマイクが邪魔になって、お客さんからは自分たちの顔が見えづらくなってしまう。
漫才では、漫才師の表情や身体の動き、手の動きなども、すごく重要な笑いの要素です。お客さんから見たときに、それらが見えづらいというのは、笑いが起こるチャンスを損なうことにつながります。だからマイクは、多少声を拾いづらくなるとしても、少し低めにするという方法もあります。
音声スタッフに「このコンビはよく動く」と思ってもらう
それから、ちゃんとすべての声を拾ってもらうために、僕は音声さんに「このコンビは動き回るぞ」と思ってもらうのも意識していますね。
サンパチマイクとピンマイク・ガンマイクを併用しているとき、音声さんは適時、マイクを切り替えています。たとえば、漫才師がサンパチマイクから大きく離れたときは、ピンマイクやガンマイクに切り替えて、音を拾えるようにしているんです。
サンパチマイクの前からあまり動かない漫才師の場合は、基本的にサンパチマイクを生かしておけばいい。でも、「いつ何時、どう動くかわからない」という漫才師の場合はずっと動きを追いかけてマメに切り替えなくちゃいけない。
「こいつは激しく動くぞ」と音声さんに思ってもらうことも、意外と漫才の出来を左右するもんやと思います。