一大産地・瀬戸内海でも逆風が吹いている

対照的に日本国内では成長産業という言葉はほとんど聞かれない。

無理もない。農林水産省のデータによれば、2023年の養殖カキの収穫量は14万6300トンであり、2000年と比べて3割以上減少。波が穏やかでカキ養殖に理想的といわれる瀬戸内海があるにもかかわらず、世界と真逆の動きをしているのだ。

【図表1】養殖カキ収穫量の推移
農林水産省「海面漁業生産統計調査」より編集部作成

ちなみに、都道府県別でみると広島県が圧倒的1位であることが分かる。そのため、広島県の収穫量によってその年の収穫量は大きく左右される。

【図表2】都道府県別 養殖カキ収穫量(2023年)
農林水産省「令和5年漁業・養殖業生産統計」より編集部作成

収穫量が減っている理由はさまざまだ。家庭でカキフライやカキ鍋を食べる機会が減り、消費が大きく落ち込んでいる。食生活の変化が影響しているわけだ。

生産面も見逃せない。一大産地である瀬戸内海を見ると、①水質改善に伴ってカキの餌となる植物プランクトンが減少②気候変動の影響で海水温が上昇するなど環境が変化③現場作業員の確保が難しいなど労働力不足が深刻化──といった問題が出ている。

重労働で「熟練の技」が必要だが…

このうち労働力不足は3Kと絡んでいる。日本で一般的な垂下式養殖は重労働を伴うからだ。

海に浮かぶいかだからロープを吊るしてカキを育てるのが垂下式だ。この場合、養殖業者は育成中のカキに付着した生物を定期的に除去しなければならないし、収穫時には船上にクレーンを建てて重いロープを巻き上げなければならない。

むき身での販売を前提にしているため、「かき打ち」と呼ばれる加工作業も伴う。何人もの熟練作業員が1粒ずつカキを手に取り、専用ナイフを使って殻をこじ開けて身を取り出すのだ。

ファームスズキは垂下式に手を出さず、設立当初から独自路線を貫いてきた。目標は大きく三つある。

第1に、海外から最新技術を導入し、フランス語で「クレール」と呼ばれる塩田跡を利用した陸上養殖のパイオニアになる。

第2に、海外で競争力のある生食用カキであるクレールオイスターを開発し、高級市場向けにグローバルに事業展開する。

第3に、種苗生産から養殖、輸出販売、レストラン経営まで一貫して行うビジネスモデルを築き、「6次産業化」を達成する。