「怪しい投資話」に、なぜ人は騙されてしまうのか。詐欺事件を専門的に扱っている杉山雅浩弁護士は「被害者のほとんどが、友人からの紹介で時計ブローカーを名乗る加害者を紹介されていたため、安心して投資してしまった。騙されないためには『他人に自分のお金を預けない』ことを徹底してほしい」という。ライターの黒島暁生さんが聞いた――。(後編/全2回)
資産がない人には借金をさせてお金を振り込ませる
(前編から続く)
――投資をめぐる詐欺事件やトラブルが発生しています。こうした事件は、経済力のある人が狙われるのでしょうか。
もちろん、投資詐欺に遭った人のなかには資産家もいます。ただ、全体の傾向としては、資産がある人がターゲットになっているのではなく、ごく普通のサラリーマン、学生、専業主婦などが被害に遭っています。
なぜなら詐欺師は「借金をしてでもこの投資のチャンスを逃すな」と刷り込むんです。詐欺師からすればお金を受け取れればいいので、被害者が借金をして作った金であっても関係ないのです。したがって「自分には資産がないから狙われることはない」と思うのは間違いで、借り入れなどによって詐欺の被害に遭うことがあると覚えておくといいでしょう。
――前編では投資詐欺、副業詐欺が増えているとのお話がありました。詐欺のトレンドはあるのでしょうか。
基本的に“流行り廃りはない”と私は考えています。ただ近年、モノとしての商品ではなく、権利・役務を売る「モノなしマルチ商法」が増えてきた印象があります。有名なところでは、暗号資産で資産運用をしてあげると持ちかけられる話です。
このときに、「誰かを紹介すれば報酬が得られる」「商品を売った人がさらに新たな人に売ると、追加で報酬がもらえる」という、いわゆる使い古されたマルチ商法の手法が取り入れられているものは詐欺なので注意してください。