今でも「贅沢は敵だ」のメンタリティのまま
日本人は「勝ち逃げ」も苦手です。株式投資でちょっと儲かったところでの売り抜けです。逆から見れば、株であろうが、ギャンブルであろうが、勝ち逃げができる人が最終的に勝ちます。勝ち逃げや損切りができないから、負けるまで続けてしまうことになるのです。
なぜ、そうなってしまうのか。
当の本人も、勝っているところで止めるなんて、ズルいと思ってしまうのかもしれませんね。「負けるまで戦えよ」なんて、負けている人間がひがみで言っているだけなのですけどね。
勝っているところで逃げて、一生楽な暮らしをするという手だってあるわけです。
株式投資などでよく言われることですが、逃げるのがうまい人が結局、いちばん儲けるのです。バブル時代を振り返れば、それはよくわかります。
「これはバブルだからいつか弾ける」と気づいた少数の人は、そうなる前に全部財産を処理して、弾けたときに買い戻して大金持ちになりました。
しかし、大半の人はそうはいきませんでした。日本人は逃げ方が下手なのです。要するに玉砕というメンタルがまだ残っているのでしょう。
日本人のメンタルは昭和10年頃に書き換えられているのです。それ以前、とくに大正時代などは、贅沢は素敵なこととされていました。それが日中戦争が始まると「贅沢は敵だ」に変わり、いまだにそのメンタリティを引きずっているのです。そして、この時期から体罰が始まり、生きて虜囚の辱めを受けずなどといって逃げることが恥だという価値観や道徳観が植え付けられたのです。
「やればできる」には条件がある
「やればできる」という言い方があります。
多くの場合は、会社や学習塾などをやめたいと申し出たときに、「キミはやればできるんだから」などと慰留の意味を込めて使われているようです。「やればできるんだから」の後には口には出さなくても、「だからここから逃げるんじゃない」という思いが込められているのでしょう。
たしかに、自分の経験上でも「やればできる」人は少なからずいますが、じつは「やればできる」には条件があることをご存じでしょうか?
それは何かというと、「逃げてこそ」、つまり今のやり方を変えてこそなのです。
「やればできる」ということは、「今はできていない」ということです。
それなのにそのまま今の職場にいたり、今の勉強法を続けていたりしていたのでは何も変わりません。