営業先はレストランや喫茶店ではないのかもしれない

「どうだ、調子は」。背中から声を掛けられ、振り向くと小林統轄部長です。「最近はちょっと、厳しいです……」「いま、どんなところを回っているんだ」「レストランとか喫茶店とかそういったところです」

カフェの店内
写真=iStock.com/Tolimir
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「ちょっと教えて欲しいんじゃが、お前は何を考えて新規の取引先を探しているんだ」。押し黙っている私に「お前はまずレストランや喫茶店に自分たちの製品を買ってもらいたい、機材を置いてもらいたいと考えているんじゃないか」との質問が飛んできます。

「もしそう考えているんだったら順番が違うぞ。商品を買ってくれる、機材を置いてくれることが先じゃなくて、我々の商品が欲しい、あったら嬉しい、我々の機材を置いたら便利になる。そういうところはどこか。まず相手の都合から考えるということだ。ひょっとしたらレストランや喫茶店じゃないのかもしれん。新規開拓はいままでの延長線上でものを考えないことだ」

小林部長はそれだけ言うとさっさとどこかに行ってしまいました。私はなんだか答えが見つからない宿題をもらった気分でした。

大型家具店に設置された「少し広めのスペース」

しばらくたってから、ルート営業時代の同僚の徳田からの連絡です。「マナベインテリアハーツという大きな家具屋さんがあるんだが、店の中央にちょっとしたスペースを設けるというので、自販機コーナーを提案しようと思うんだ。暇だったら一緒に行かないか」

マナベインテリアハーツは県内でも屈指の大型家具店で見渡すほどの店内には大型家具から学習机、ランドセルまで陳列されています。店員さんに案内されて店の中央まで進むとまるで喫茶店のようにテーブルが置かれている少し広めのスペースが設けられています。

店員さんが「この店はご結婚をされる際の家具セットも取り揃えているんだけど、ご両親と同伴で来る方も多くいるんですよ。ましてや子供さんの入学シーズンともなればご家族連れで来店されて、結構にぎわうんです。そんな時に大人数でもゆっくりとどの家具にするのかといった話をする場所がいるので、このスペースをつくったんです」とのいきさつを話してくれました。