『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』が発行部数150万部を突破し、一大ブームとなっている。こうしたなか『マネジメント信仰が会社を滅ぼす』という挑戦的なタイトルの本を著したのが経営コンサルタントの深田和範さんだ。
「もしドラはわかりやすく、ドラッカーの入門書としてはとてもいい。先行きに対する閉塞感が漂うなか、なんとか会社を変えようとの思いから、この本を手にするのでしょう。しかし、目先の利益を得るための道具としてマネジメントが崇め奉られすぎている気がします」
そう語る深田さんが本書で最初に指摘するのが、マネジメントとビジネスの違いだ。
「マネジメントは事業をうまく運営することであり、知識や手法にすぎない。一方のビジネスは何らかの事業を行うことであり、意思に基づく具体的な行動です。つまり、いくらマネジメントに力を入れても、それは既存の事業を上手に回すだけで、新しい付加価値は何も生まれてきません。つまり、いまのような状況ではビジネスに傾注することのほうが大切なのです」
深田さんが実際に遭遇した経営者で、「会社を復活させるためにトイレ掃除から徹底的に行った」と紹介しているマネジメント本を読み、社員に実践させた人がいたそうだ。確かにトイレはピカピカになった。しかし、それで社員の意識が変わるわけでも、業績が向上するわけでもなく、数年後に倒産してしまったという。
「小手先のマネジメントにとらわれることなく、自らの経験と勘、そして度胸で新しい事業を興していくことを促したい。そういう私も大手コンサルティング会社を最近辞めました。マネジメント信仰を捨て、ビジネスに挑戦する必要性を痛感したからです」
行間から滲み出てくる深田さんの決意に読者は大いに刺激を受けるはず。今後、深田さんがビジネス哲学をどう進化させていくのかにも期待したい。