私たちはいまやまったく体を動かさなくても生きていける社会をつくってしまったが、身体や脳の仕組みは野山を駆けまわって狩猟採集生活をしていた時代から変わっていない。

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脳トレは“有酸素運動”が決め手!

人類の祖先の脳が一気に肥大化を始めたのは、約200万年前、猿人が樹上から地上に下りたときだといわれている。「枝をつかむことから解放された手で道具を使い始めたことで脳が急に大きくなった」というのである。

しかし最近では、「2本足で長時間走れるようになったことで脳が大きく成長した」という説も提唱されている。長時間走れる体になった人類は、足の速い肉食動物が狩りをする後を持久走で追いかけていき、獲物の肉を横取りして食べていたというのだ。ワーキングメモリーをフル活用しながら持久走狩猟をすることで脳を刺激し、肉を食べることでタンパク質を吸収し、さらに脳が肥大化する――つまり、走ることで人類は脳を進化させてきたというわけだ。

この説を支持する研究者も増えてきている。走ることが、ヒトをヒトたらしめたとするなら、我々現代人も走ることを放棄してしまってはいけないはずだ。

もちろん、難しく考えすぎる必要はない。ただ、道に出てゆっくりと走りだす。それだけでいいのだ。脳のため、これからの人生のため、まずは一歩を踏み出してみませんか?

(京都大学名誉教授・医学博士 久保田 競=監修)
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