介護の主な原因の3割が「骨折・衰弱・関節疾患」
2019年の調査では、日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳でした。対して健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳です。平均寿命と比べると、約10年の差があります。健康寿命とは「健康上のトラブルがなく、日常生活に支障なく暮らせる期間」のこと。つまり、寿命を迎えるまでの最後の10年間は、人の手や高度な医療の力を借りないと生活できない人が大勢いるのです。
一体どうしたら死ぬまで自力で立ったり歩いたりしながら、自分らしい毎日を送れるのでしょうか。そのヒントが「介護が必要になった主な原因」の統計にあります。
このデータによると「骨折・転倒、高齢による衰弱、関節疾患」が原因の35パーセント以上を占めています。つまり、「関節の痛みがなく、丈夫で、転ばないからだづくり」こそが、寝たきりを回避し、健康寿命を延ばすポイントだといえるのです。
死ぬまで自力で歩き、アクティブに生活しつづけるためには「関節の痛みがなく、丈夫で転ばないからだづくり」が大切とお話ししました。しかし近年、こうした健やかなからだづくりをおびやかす大変なできごとがありました。そう、なにを隠そうコロナ禍です。
コロナ禍以降の運動不足は深刻
新型コロナウイルスによって、わたしたちの生活は激変しました。外出自粛要請が出され、家でひたすらじっとしていた……という人も多いのではないでしょうか。その結果、コロナ禍以降「足がもつれてうまく歩けなくなった」「よく立ちくらみを感じるようになった」という方が、わたしのサロンにもたくさんいらっしゃるようになりました。
外出や運動の機会が減り、からだの活動量が減ると、首や背中が正しく伸びたバランスのよい姿勢が保てなくなります。なぜなら筋肉が衰えて、重い頭(頭の重さは5~6キロもあります)を支えきれなくなると、頭の位置が前方に下がっていき、次第に首や肩も前に出て、猫背になり、からだ全体が前のめりに崩れていくからです。
バランスの悪い姿勢で歩くと、上半身の重みがつねに前方にかかり、つまずいたり転んだりしやすくなります。また、足底には脳に正しい姿勢を伝えるためのセンサー(神経伝達物質)があります。足底の筋膜が十分に発達していないと、脳への伝達がうまくいかず、立ち上がった際に頭のポジションをどこに置いたらいいか、からだが一瞬混乱してしまいます。
すると、頭がグラグラと不安定になり、立ちくらみが起こるのです。