岸田氏が能登の演説会場で語ったこと

岸田氏は首相を退任したばかりという悲壮感はなくてむしろ元気そう。耳を傾けていると、演説の後半にその言葉が出た。

「今、選挙がおこなわれている。もちろんですね、この被災地の皆さんにおかれては今まだ自分たちは大変な状況なんだ、苦しんでいるんだ、その最中になんで選挙をやるんだという思いを持っておられる方もおられる。こういったことも十分承知をしています。本当に厳しい状況ですからそう思われる方がおられることも、我々はあのー、十分理解しなければならないと思っています」

そして今回の選挙の「意義」を次のように説明した。

「ぜひ皆さんに考えていただきたいことがあります。民主主義国家においては、政府や政治家は皆さんの選挙による投票によってエネルギーや活力、元気をいただくことになるわけであります。皆さんが選挙において投票することがその政治家や政府に対して力を与え、より思い切って対策を進める原動力になる。これが民主主義国家における選挙であります」

驚いた。今回の選挙は政治家に元気を与えるため、というのだ。だから意思表示をしてくれと。被災地で自分たちの都合を堂々と話していることが衝撃だった。「投票によってエネルギーや活力、元気をいただくことになる」と言うが、岸田氏や応援演説をした候補者は与党だ。

裏金問題を早く片付けてしまいたい

今のままでは何もできないのか? その一方で裏金問題を早く片付けてしまいたいという解散戦略について正直な説明はできないだろうなぁとも感じた。

裏金と言えば私たちが能登へ行った日、あるスクープが放たれた。自民党が派閥裏金問題で非公認とした候補の政党支部へ活動費2000万円を支給していたことが判明したのだ。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の報道である。裏金報道自体も赤旗が最初だった。

自民党の森山裕幹事長は支給を認めた上で「党勢拡大のための活動費として(党支部に)支給した。候補者に支給したものではない」とのコメントを出した。この説明で「募っているが募集はしていない」を思い出した。2020年の「桜を見る会」をめぐる国会答弁で安倍首相がした珍答弁だ(詳細は各自確認)。

そういえば石破首相は安倍政権時代は“党内野党”としての言葉が注目された。