ミスは責めずに丁寧にお願いする

染工所に到着すると、担当者に遅れられない事情を説明し、あえて相手の加工ミスは責めずに、再加工の納期を短縮してもらえるようにていねいにお願いしました。

1日かけて現場で粘り強く交渉した結果、納期を短縮することに成功したのです。

これは、私が現場に出向き、直接交渉したからこそ得られた結果です。電話やメールでは、このような結果にはならなかったでしょう。

現場での真剣な姿勢と緊迫感が、担当者に伝わったのです。

「予測できないトラブルが起きるのはしかたないが、納期を詰めてもらわないと帰れない」という強い覚悟で臨んだ結果、相手も動いてくれました。

問題が起きたときには、柔軟な発想と迅速な行動が求められます。どんなに困難な状況でも、諦めずに最善を尽くす姿勢が相手を動かすのです。

POINT
・トラブルはつきものだと覚悟を決めて、臨機応変に対応することが重要。
・難航しそうな場合には、現場での直接交渉で誠意を伝えることも効果的。

厳しい案件でも引き受けてしまう取引先

これまで取引先や交渉相手へのアプローチ方法についてお伝えしてきましたが、視点を変えて、「この人の依頼であれば受け入れてしまう」「この人となら一緒に仕事がしたい」と思えるのはどんな人かについて考えてみたいと思います。

相手先からこのように思ってもらえるようになることは、交渉上手になるためのヒントになるはずです。私が若い頃にとてもお世話になった取引先の方とのエピソードをもとに考えてみましょう。

その方は、いつも訪れるたびに面白い話や役に立つ話をしてくれる人生の先輩のような存在でした。自分の仕事に関わる人たちすべてに、心から感謝している人でした。

誰に対しても謙虚な姿勢で接し、「私は一人では何もできない」が口癖でした。しかし、仕事に対してはとても厳しく、無理難題ではないものの、価格的にも納期的にもギリギリのところを要求されることが多かったのです。