人事評価制度を「完全成果主義」に
私がウォルト・ディズニー・ジャパンをV字回復させるためにとった第二の秘策は「完全成果主義をメインにした人事評価制度」です。
私の前任者のアメリカ人は評価が甘く、社員の50%以上がAの評価でした。つまり、ジョブ型の「完全成果主義」が上手く運用されてなかったのです。完全成果主義の人事制度は、業績連動が必須です。業績によって昇進、降格や年収が決まります。
部下がいくら上司にゴマをすろうが、媚びを売ろうが、昇進できるかどうか、そのポジションを維持できるかどうかには関係がなく、ただただ成果を上げたかどうかだけで決まります。
こういった組織のほうが組織全体で成果を上げやすくなるのは、外資流の経営を経験したことがある人なら当たり前なのですが、まだまだビジネスの現場でも情緒にすがろうとする日本人には馴染みがなく、それが日本経済衰退の一因だと私は考えます。
さて、「完全成果主義」を正しく運用するべく、私がウォルト・ディズニー・ジャパンで導入した評価制度は、5段階の相対評価でした。5段階評価といっても、日本的な5段階評価ではありません。日本企業での5段階評価では、最も高い評価がSで、A、B、C、Dの5段階評価だとすると、Bをもらう人が最も多くなり、あまり業績が良くない人でも相手を傷つけないために最低でもC程度でお茶を濁すことがよくあります。
目標を100%達成するのは当たり前という風潮
そのせいで、Sがつけづらくなり、なぜか社員の多くがB評価をもらい、CやDなどをつけられる社員は事実上ほとんどいないといった状況に陥ってしまいます。
このような評価方法に、意味があるとは思えません。ほとんどの人がBをもらうことができ、悪くてもCで済まされるなら、社員は「向上しよう」というモチベーションも、「向上しなければまずい」という危機感も抱きにくくなります。
ですから、私は完全成果主義に基づく5段階評価を導入する際に、あるルールを設けました。そのルールは以下の通りです。
① ただ目標を100%達成しただけならB評価
② 目標の達成度がかなり良ければA評価
③ その上で会社にとってさらに意味のある価値を提供できればS評価
④ C・D評価はボーナスを0にし、その分をS・A評価の社員に回す
つまり、目標未達成の場合は、CかDの評価を容赦なくつけることにしました。これによって、目標を100%達成するのは「当たり前」という風潮を生み、かつ達成できなければ遠慮なしにC・D評価を受けるという緊張感をも生み、また、会社にとって意味のある価値を生みだせばS評価という最上級の評価を得られるのだという完全成果主義の考えを社員に浸透させることができました。