※本稿は、イアン・ブレマー、フランシス・フクヤマ、ニーアル・ファーガソン、ジョセフ・ナイ、ダロン・アセモグル、シーナ・アイエンガー、ジェイソン・ブレナン『民主主義の危機 AI・戦争・災害・パンデミック――世界の知性が語る 地球規模の未来予想』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
今まで以上に格差があおられるシナリオもある
かつてのGAFAのような巨大IT企業によるビッグデータの独占、それにもとづくAIによるデータと権限の集中は、アメリカの企業「オープンAI」による「チャットGPT」が問題視されるなど「技術的革新の成果ではない」と見る人たちもいます。個人の自由、プライバシー保護なども含め、AI、テクノロジーの進展から見てどういう将来になるか心配する人も増えています。
これは我々がまだわかっていない新しいゲームです。
最良のシナリオでは、このLLM(大規模言語モデル)は、我々の生活の多くの面を良くするでしょうが、最終的には独占市場になるでしょう。生き残るのは一つか二つのモデルになるでしょう。
そうなると今まで以上に格差があおられます。
政府はロードマップを示さなければならない
多くの人が切に望んでいる、典型的なタイプの個人の自由や主体性、共有された繁栄といったものをどのように維持することができるのか。それらは期待することができるものなのかはわかりません。これから数十年先、どのようになっているかはまだわかりません。
イノベーションの方法も変えなければならないでしょう。どのようなタイプのテクノロジーをターゲットにするか、それらのテクノロジーをどのように使うか、それらの制度的な整備は必須と言えます。
つまり政府が介入するべきだということです。格差を減らすために、政府が一つのグループから別のグループに再配分することは重要ですが、社会的セーフティーネットを強化するため、それも格差是正には重要です。
しかしもっと重要なことは、こうした新しいテクノロジーに対して我々が何を期待しているのか、その新しいテクノロジーを獲得するにはどうしたらいいのか、それをどうしたら規制できるのかという視点から見て、政府はロードマップを示さなければならないことです。そのままやりたい放題にさせておくわけにはいきません。放置したままルールが後追いになれば手遅れになります。