クリニックにも名医は多数いる

こうして緊急性のある疾患を除外したら、治療をしながら経過を診ることになります。経過が予想と異なれば、診断を適宜修正し、検査を追加します。最初に述べた「胃薬で改善しない胃炎疑い事例」なら、次に行う検査は上部消化管内視鏡でしょう。それでも症状を説明できる病変が見つからないなら、腹部超音波検査や腹部CT検査と進めていきます。

私はCTやMRIや消化管内視鏡ができる病院に勤務することが多かったのですが、クリニックではなかなかそうはいきません。その日のうちに採血の結果が出ないクリニックもあります。さらに自前の設備でできない検査は、紹介状を書いて他の施設に依頼することになります。でも緊急性のない疾患であれば、それで十分です。検査環境が整っていないという理由だけで、クリニックへの通院をやめて大病院へ行くのはもったいないと断言できます。クリニックには診療経験が豊富で腕のよい医師がたくさんいるのです。

私は大学院卒業後、地域で一番大きい病院に勤務していましたが、近隣のクリニックでは不安だという患者さんがよく受診されました。しかし、そうしたクリニックの院長先生は私が勤務していた病院の元内科部長だったりするのです。研修医に毛が生えたぐらいの私よりもはるかに腕のよい先生でした。

病院の受付
写真=iStock.com/onurdongel
※写真はイメージです

「ドクターショッピング」は悪手

ただ、なかなか症状が改善しないときに病院を変えるというのは選択肢の一つです。しかし、病院を変える大きなデメリットは、それまでの経過がわかりにくくなることです。特に次々に病院を変える「ドクターショッピング」は無駄な検査ばかり増えて、よい結果にはつながりません。同じ医師にじっくりと経過を見てもらったほうが、結局のところ診断が早かっただろうケースもあります。

信頼できるクリニック(かかりつけ医)を見つけ、普段から継続して診てもらい、必要に応じて高次病院に紹介状を書いてもらう、というのが理想です。とはいえ、なかなか理想通りにいかないのが現実ですので、「病院を変えるな」とは言えませんが、こうした事情も理解した上で賢く病院を変えましょう。

患者さんが診療のよし悪しを判断するのは難しいですが、傾向としては、問診や身体診察をおろそかにして検査ばかりする医師よりも、丁寧に話を聞いて体を診察してくれる医師のほうがずっと信頼できるといえます。

また診断は確実なものではなく、必要に応じて追加の検査が必要になることもあると説明してくれる医師は、よい医師である可能性が高いです。ただ、そうした説明を「医師の自信のなさの現れ」だと感じてしまう患者さんも少なくないでしょう。診療の現場では、患者さんと医師との信頼関係が大切だということをお伝えしたいです。

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