クーラーボックスの中に入っていたもの

解体用の道具についても、彼はネットを駆使して情報を収集していた。

「片刃ノコギリと包丁2本、あと包丁を研ぐための砥石とハサミを用意しました。ハサミは皮を切るためです。人間の皮って尋常じゃないくらい硬いんですよ。分厚いし切れない。最初は包丁でやろうとしたんですけど、刃が滑って切れないから……。骨から肉をそぎ落として、鍋で煮て猫砂に入れてました。鍋で煮るときはキムチ鍋の素を入れて消臭してました」

後に開かれた裁判で検察は、警察の捜査員が自宅へ踏み込んだ際に白石が指差した、クーラーボックスやRVボックスの中身について触れた。その内容が明らかになる前に、私と面会した白石は次のように語る。

「警察がやって来たときは、(それぞれのボックスの中に)骨と首から上があったんです。首から上は、バラすのがめちゃくちゃ大変なんですよ。調べたら、とくに顔の上半分がとにかく骨が硬いみたいなんです。だからやる前に諦めて、首ごと捨てるつもりでした」

殺害と雑談を同列に語る

私は白石との面会で、最大で30分間ある面会時間のうち、最初の5分と最後の5分は、事件について話さないことにしていた。つまり、全体の3分の1が雑談だ。

彼はその際に、将棋を趣味にしていることや、カップヌードルミニに七味唐辛子を入れるのが気に入っていること、橋本環奈や深田恭子のような顔が好みであることなどを話し、屈託なく笑っていた。しかし、そうした軽い話題に挟まれた時間で、遺体解体時の様子といった、耳を覆いたくなる話を平然とする。私がする質問と白石による回答のあまりの生々しさに、室内でメモを取る刑務官が、辟易とした表情を見せたことが記憶に残る。

廊下を歩く刑務官のシルエット
写真=iStock.com/Klubovy
※写真はイメージです

面会時の白石は拘置所のコロナ対策で顔の半分がマスクで隠れていたが、視線に険はなく柔和な印象。話し方も穏やかで声もソフトだ。事前に見たSNSの写真ではほっそりした優男であるが、拘禁生活によってやや太り、癖毛が伸ばし放題で肩まであることから、あるお笑い芸人を想起させた。面会時の服装は一貫して、拘置所で支給される手術着に似たデザインの、ペパーミントグリーンの半袖と半ズボンの上下というもの。

そんな白石は、最初の被害者Aさん(当時21)に対し、いきなり手で首を絞めるなどして失神させ、強制性交を行う。そして自身の欲望を満たした後は躊躇なく殺害していた。