京都では高級ホテルが次々と開業
外国人の宿泊費や買い物などの消費額は同年1〜3月期で1兆7500億円(速報値)に上り、四半期ベースで最高を記録した。過去20年ほどで、訪日外国人の数は飛躍的に増え、ホテルや旅館から百貨店、飲食店、土産物店などに落とす金も無視できない金額になってきた。
コロナ禍の3年間で大幅に減ったものの、東京や大阪、京都などには、欧米や東南アジアからの観光客の姿がずいぶん増えた。日本を代表する観光地、京都では、国際ブランドの高級ホテルの開業ラッシュが続いている。
日本経済新聞によると、世界有数のホテルチェーン、米ヒルトンは、2024年9月、京都市中心部の河原町三条に旗艦ホテルの「ヒルトン京都」を開業した。ヒルトンは、2021年、最高級ブランドの「ROKUKYOTO LXRホテルズ&リゾーツ」を開業して京都市内に進出。翌22年に「ヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸」、23年には「ダブルツリーbyヒルトン京都東山」と、立て続けに異なるタイプのホテルをオープンした。
2024年は、春に「ダブルツリーbyヒルトン京都駅」を開業しており、「ヒルトン京都」で1年間に2カ所の開業となる。まるで、囲碁で要所要所に布石を打つようだ。それだけ、京都には大きなビジネスチャンスがある、とみているのだろう。
このほかにも、2024年は、「バンヤンツリー」「シックスセンシズ」といった他のラグジュアリーホテル、高級リゾートホテルが続々、開業している。
いまの日本は「典型的な発展途上国」
一見、めでたい話だが、この光景には、一種のデジャブ感覚を覚える。30年以上前に、筆者が記者として駐在していた東南アジアの状況とそっくりなのだ。
当時、シンガポールやタイ、マレーシアなどでは、金持ちの日本人や欧米人目当ての高級ホテルやレストランが続々と開業し、大繁盛していた。先進国の金銭感覚からは、安く感じられたが、現地の人たちからみれば、目玉が飛び出るような値段だった。
そういう超高級ホテルやレストランには、現地の人は出入りできず、従業員として働くだけ。利用するのは、中級以下のホテルやリーズナブルな食堂だった。今の日本でも、一部の富裕層を除けば、一泊10万円や20万円もする東京や京都などのラグジュアリー・ホテルや高級旅館には、そうそう泊まれないだろう。ましてや、一泊100万円、200万円ともなると、夢のまた夢。それらの宿泊施設は、もっぱら、金持ちの外国人か日本人でも超富裕層向けだ。
超富裕層はもちろん、富裕層でもない一般の日本人は、よく言えば、おもてなしの側。従業員になるしかない……。これは、典型的な発展途上国の姿だ。