「お客様は神様」ではない

レストランや料亭の予約の無断キャンセル、大口の宴会予約の当日キャンセルで飲食店が困っているという報道をよく耳にします。食材の仕入れや当日の人員配置など、万端の準備をしている飲食店にとっては死活問題です。

このように、少し考えればわかることを無視し、自分たちの都合だけを押し通してわがままにふるまうことは、厳に慎みたいものです。

また、お店では急に横柄な態度になる人や、自分たちだけで盛り上がり、周囲の迷惑を顧みない騒ぎ方をするグループも見かけることがあります。これらはみな、相手に対する敬意が欠けている行為です。

お店のオーナーや店員、たまたま隣り合わせた客どうし、互いに敬意を持って接する気持ちがあれば、このような恥ずかしい行為はできないはずです。お客様は神様ではありません。常に人としての尊厳を忘れず、自分がされたらいやなことはしないという気持ちでふるまいたいものです。

レストランでのディナーで女性の手
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大切なのはマナーを厳守することではない

現代は、孤食という言葉もあるように、他人と一緒に食事をしない人も増えているようです。コロナ禍では、学校でも会社でも人と一緒に食卓を囲む機会が極端に減っていたことも、大きく影響しているのかもしれません。また、あまり親しくない人とも同席する可能性のある会食などは、服装やマナーが厳しそうだと敬遠する若い人も増えているのかもしれません。

ただ、それではもったいないと思うのです。何度も言いますが、大切なのは、マナー通りに食事をすませることや恥をかかずに自分をよく見せることではなく、同席した人たちがみな和気あいあいとおいしく食事ができること。食事の時間は他の時間と比べて濃密で良質なコミュニケーションをはかることができます。

これこそが思いやりのマナーの原則であることを心に留め、会食に招いたほうも招かれたほうも、互いをもてなす気持ちで臨めば、充実した時間が過ごせるものと確信しています。