枝野氏は「リベラル保守」「保守本流」を自称

エネルギー政策でも、世界的に脱炭素の流れが止まり始め、再生エネルギー一辺倒のエネルギー計画は計画ですらないと何となく理解してきたからか、いまごろになって原子力発電所の稼働はある程度認めるべきである的なことを立憲各候補も言い始めました。これらの政策は、いままで立憲支持のなかでも目立つ左派の意見を尊重してなかなか強くは主張できなかったことでした。

今回対抗で出てきた枝野幸男さんも、おそらくはこのような形で表舞台に立つことを最後と思って、それなりに意気込んで出馬しているようにすら思います。そもそもが、旧立憲民主党の流れを作って野党崩壊を防いだ立役者その人であり、思い返せば国民にとっては不幸な無能を晒した菅直人政権時代の官房長官として最低限以上の仕事をした人物だと考えれば、もうすでに日本政治において十分すぎるほどの役割を果たしてきた政治家とも言えます。

枝野幸男前代表。じつは「リベラル保守」や「保守本流」を自称している
枝野幸男前代表。じつは「リベラル保守」や「保守本流」を自称している(写真=Khronos-dolls/CC-Zero/Wikimedia Commons

野田佳彦さんも枝野幸男さんも、本来は代表の座をめぐって相争うべき立場ですらなく、今回の代表選は「どのようにして立憲の目指す政治をより中道的なものに寄せていくか」という、大きな意味での軌道修正を図るための一戦であるとも言えます。枝野さんも、発言をよく見ていくと「リベラル保守」や「保守本流」を自称するなど、本当はかなりわかっていながら現実的に仕方なくいろんなものに取り組んでいる側面さえも感じさせます。

「野党共闘」といっても、一筋縄ではいかない組み先ばかり

そして、立憲民主党も党是として、また野党第一党としてどうしても「政権交代」を叫ばなければなりません。ですが、泉体制でも(衆議院の)150議席を目指すとしていた目標では政権交代には届きません。これは、従来の立憲支持層だけでは到底政権交代まで議席を伸ばすことができないと気づき、国民の大多数を占める中間層や政治無関心層にも現実的な生活者目線での政策立案にシフトしたことの表れとも言えます。

そう考えれば、もちろん自民党総裁選に対抗して無理矢理女性候補を捻り出すよりは、まだ若い泉健太さんの代表を継続して野田佳彦、枝野幸男両ベテランが支える挙党体制を築く選択肢もあったんじゃないかなあ、と思ってしまいます。頑張ったのに人気のない泉健太さんが不憫で。

立憲単独での政権奪取にまだまだ時間がかかるぞという話になると、反自民党・反自公政権の軸で野党が結集することもひとつの焦点になるはずなのですが……もともとは同じハコであった国民民主党はともかく、野党共闘でも状況を打開できなかった日本共産党との野党共闘路線はどうなるのでしょうか。また、喉から手が出るほど欲しい若い人からの支持はまあまあありながらも山本太郎私党のような感じで話が通じず扱いがむつかしい、れいわ新選組、さらに党組織はガタつきながらも反自民の票を一定以上喰ってしまうことが確実な日本維新の会など、一筋縄ではいかない組み先ばかりが残ってしまっています。野党にはどうしてこういう話のわからない人たちばかりが集まってしまうのでしょうか……。