ドラマシリーズ全体の70%を占めたのは…

では、かつての日本を舞台にしたハリウッド作品との違いは何かというと、「日本語言語が占める割合の多さ」にある。日本語がドラマシリーズ全体の70%を占め、しかもそれが各話約1時間の全10話という長さのなかで展開される。そもそも「SHOGUN 将軍」はディズニーによるオリジナル配信ドラマであり、ディズニー配下の配信プラットフォームで全世界同時配信された作品なのだ。つまり、全世界の人口のなかで約1.5%が使う言語である日本語をドラマで扱うリスクを承知の上で、全世界向けに作られた。にもかかわらずヒットし、エミー賞という晴れ舞台で評価されたのだ。

ここで日本語のドラマでも海外でウケると言い切りたいところだが、そう単純なものではない。ここはマーケティングを重視するハリウッド主導の製作が物を言ったのだろう。どんなストーリーであれば世界の視聴者に関心を持ってもらうことができ、ヒットするのかということが重視されたように思う。

ヒットの理由1:ドラマ市場の定番トレンドを押さえている

まず、権力闘争や人間ドラマを描くのは世界のドラマ市場で定番トレンドだ。加えて、複雑な相関図が描け、登場人物ひとりひとりのキャラクターが立ったものであれば、なおさら好まれる。言うなれば、主人公以外の登場人物にも共感できるようなキャラクター合戦が成立する作品が世界ヒットの法則にある。

「SHOGUN 将軍」は権力闘争に人間ドラマ、キャラクター合戦が詰まったドラマゆえに、世界で最もヒットしたドラマの1つになぞらえて「日本版ゲーム・オブ・スローンズ」とも言われている。

実際「SHOGUN 将軍」では、真田が演じた徳川家康がモデルの主人公・吉井虎永の策略家っぷりだけでなく、サワイの細川ガラシャをモデルにした戸田鞠子には現代的なパワーウーマン的な要素もあり、浅野忠信が好演した小賢しい家臣役は中間管理職のサラリーマンにも見えた。人種や言語云々以上に興味を持てるキャラクター劇として楽しめる物語になっているのだ。