スケートボードは想像以上に繊細な乗り物
「新たなお家芸」
東京五輪に続きパリ五輪でも活躍が目立ったことで、スケートボードに対してこのような認識が定着しつつある。パリに向けた世界ランクでも、4種目中3種目でトップ10のおよそ半数を占めていたし、パリ後も唯一勝てていなかった男子パークで、永原悠路が国際大会日本勢初の優勝を飾るなど、その勢いは陰るどころか増しているようにも見える。
となると、皆がこう思って当然だろう。
「なんでこんなに強いの?」と。
そこにはいくつかの理由が考えられるのだが、行き着く先は「国民性」ではないかと思う。
一体どういうことなのか。
まず日本人の特性のひとつに「勤勉性」があると言われている。各地の伝統工芸品を見ても、コンビニの商品ひとつをとっても、接客業の方の立ち居振る舞いをとっても、ここまで細かくサービスが行き届いた国はないだろう。
これをスケートボードに置き換えてみる。実はスケートボードは想像以上に繊細な乗り物で、上達には極限までの根気と忍耐力を必要とする。一度でも乗ってみれば、その難しさがよくわかる。ほんの少しバランスやタイミングがズレるだけでトリックの成否が分かれるし、転倒も日常茶飯事。そこには痛みも伴う。それでも繰り返し成長していくためには必要なのが、勤勉性からくる真面目で我慢強く練習でき、細かな表現にも長けた日本人気質ではないだろうか。
「真面目かつ地道に練習できる国民性」の効果
なぜならパリ五輪がそれを如実に表していたからだ。もともと堀米雄斗や吉沢恋の練習におけるストイックなエピソードはすでに様々なところで語られているが、それだけではない。女子パークでは「日本人“母”が表彰台を独占」と話題になったが、金メダルを獲得したアリサ・トルーもまた、周囲から体力おばけと呼ばれるほど、いつもひたすら楽しそうに練習しているという。
さらに言えば男子パークの銅メダリスト、アウグスト・アキオも日系3世だし、男子ストリートの銅メダリストで、名誉ある国際大会で数え切れないほどのタイトルを手にしてきたスーパースター、ナイジャ・ヒューストンも日本のクォーターだ。本国アメリカの歴史を遡っても、’70年代の伝説的なチームZ-Boysに所属したショウゴ・クボ、’80年代に一時代を築いたクリスチャン・ホソイやスティーブ・キャバレロなど、アイコニックなスケートボーダーの数々が日本と縁深いことに気付く。この事実を見ると、真面目かつ地道に練習できる国民性が、スケートボードのスキルアップと相性がよく、それが遺伝子レベルで作用しているのでは、と考えてもおかしくはないだろう。