宮城野の自由とは何か

菊地桃佳さん(宮城野高校2年)。

普通科2年生(文系コース)菊地桃佳(きくち・ももか)さんが通う宮城野高等学校は、ちょっと変わった県立高校だ。まず、部活がない。

「新しい高校なんですよ。16年前に建って。校風がすごい変わってて、生徒の自主性に任せるから校則もないんです。勉強するもしないもすべて自分の責任。『何をやってもいい。道を外さなければ、後は自由です』みたいな学校なんです。決まっているのはクラスと授業の時間帯と上靴くらい。もちろん制服もないし、髪も染めていいし、ピアスもOK。メリットは、自分次第でやりたいことができること。ただこれはデメリットにもなります。毎日コツコツと勉強するのも自由だし、遊ぶのも自由。時間があってもそれをうまく使えなかったら、ただの怠けた生活だし。誘惑も多いから大変です(笑)」

「自由は山巓(さんてん)の空気に似て、弱き者には険しい」ということばがあります。自由と言われて困っちゃうことはありませんか。

「難しさは、具体的な自由がわからないことです。ただ『自由』っていう言葉を渡されて、それを自分なりに解釈しろってかんじなので。学校でも『宮城野の自由とはなにか』って言うはなしが何回もありますが、やっぱりすぐには結論は出ません。人によって解釈が違うから、たぶん結論は出ないと思います。でも宮城野生は、自由と社会のルールの区別はあるということはわかっているので、極端な話、宮城野の自由は校外に出てしまえば異端になる。これが難しさですね」

仙台での取材は昨年の9月末。その時点では菊地さんは、NPO法人に参加し、教育支援のしごとをしたいという話を聞かせてくれた。きっかけは、学校で聴いた講話だったという。

「1年生の冬に聴きました。土曜になんか総合学習の時間みたいなかんじで『職業人に学ぶ』とかなんかそういう。通称『土曜ゼミナール』、略して『土ゼミ』です。話をしてくれたのは、シリアに行っていた日本の人です。13歳までのサッカーチームのコーチをやってた人で。シリアでは今、代表とかになれるくらいすごく上手い人でも、学校に行く余裕もなくて、13歳になったらサッカーとかを続けてる余裕もなくて、強制的に働いたりしなきゃいけないって聴きました。それを聴いて、なんか自分は何でもできているから、そういうのに関われたらいいなぁって」

NPO法人で仕事をするとします。何を手に入れておく必要がありますか?

「どの世界でも通用するように、やっぱり語学力。まず英語はどこに行っても通用できるくらいまでには必要だと思います。あとは、やっぱり人と関わるっていう仕事がメインになると思うから、いろんな人と関わったりする経験的なものも必要だと思う。今のところは大学に行くこと考えてるんですけど、NPOに入るのもけっこう人気っていうか、みんな『なりたい』とか言ってるから、やっぱり大学とかに入っておかないと社会では難しいと思うのもあるし」

こういう話は、もう先生と始めたりしているんですか。

「先生とは『英語教育がしっかりしてるところに行ったほうがいい』って話してます。宮城県内だったら、東北学院大学の教養学部の言語文化学科。なんかけっこう有名な教授がいるっていうことで、県内にいるならそこで。あとは、東京とかに行くなら、やっぱり英語教育は上智かな」

取材から4カ月。追加質問のメールを送ると、菊地さんの目指す職業像に変化があった。

(明日に続く)

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