「○○になりたくない」という負のモチベーションを意識させる
親にできるアプローチ③ 動機を作る
動機には2種類あると私は考えています。ひとつは、「○○大学に合格したい」のような、正の方向に働くモチベ―ション。「○○したい」「○○になりたい」は、努力を促す力として非常に強い力をもちます。確かに、私が東京大学で出会った学生にも「東大の○○先生の研究室で勉強したい」「官僚になって日本を変えたい」と語ってくれた人たちはたくさんいました。
ですが、それ以上に多かったのが、もう一つの動機である「負のモチベーション」です。これは、「○○になりたくない」のような、負の方向から逃げるために用いられる動機を指します。
例えば、私の場合は、「東大に合格すれば通ってもいい。もしも落ちたら、浪人するお金はないから、そのまま就職」と親から宣告を受けていました。私はお金で苦労しながら思春期を過ごしたので、金銭に対する執着が人一倍強く、高卒よりも大卒のほうが生涯賃金は優れることを知っていました。そのため、「大卒になれる未来もあるのに、高卒就職してお金で損をしたくない」と強く考えながら受験に挑みました。
つまり私は、「東京大学に行ってこんな勉強をしたい」と未来に希望を抱いたのではなく、「東京大学に行けなければ高卒就職」という未来から逃げるために、東大を受験したわけです。これが、負の感情から逃げるときに発生するモチベーションです。
「負の状況」から逃げるために東大に入った人は多い
実は、東京大学に通う学生にも、このような人はいます。今回、この記事を執筆するにあたって東大生20人程度に「勉強のモチベーションを回復させる方法は?」とアンケートを取りました。そこで3分の1以上の学生から、「成績が下がるとまずいので、そのために勉強せざるを得なかった」と回答があったのです。今回答えてくれた学生の中には、成績の上下によって親や学校から半ば虐待のように追い詰められた経験をもつ子もおり、まさに「負の状況」から逃げるために動機づけしていたといえるでしょう。