マイナンバーカードを持っていなくても心配なし

私の実家の両親宛に「最後の健康保険証」が送られてきた。

来年の7月31日まで有効と記載されているものだが、現行の健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一体化させるという政府の方針がこのまま押し通されるのであれば、来年の7月には次の新しい「紙の健康保険証」は送られてこない。つまり、これが最後の紙の健康保険証ということになる。

健康保険証の代わりにマイナンバーカードを利用するための読み取り機=2021年10月、東京都内の病院
写真=共同通信社
健康保険証の代わりにマイナンバーカードを利用するための読み取り機=2021年10月、東京都内の病院

“現行の健康保険証が廃止”とされるのは、今年の12月からだ。テレビCMでも、なかやまきんに君や王林、内藤剛志(敬称略)といった芸能人が画面に登場、いかにマイナ保険証が便利であるかを宣伝するし、現行の健康保険証の新規発行が終了することがさんざん強調されるので、12月までに急いでマイナ保険証を作らないと大変なことになるかのように思ってしまっている人も少なくないかもしれない。

しかし心配はご無用だ。マイナ保険証を作っていなくても、マイナンバーカードを持っていなくても、これまでどおりに医療機関で保険診療を受けることはできるからだ。ちなみに私は勤務医だが、マイナ保険証どころかマイナンバーカードさえ持っていない。

「そりゃ医者は自分で処方や検査を自由にできるから必要ないでしょ」と思う人もいるかもしれないが、そんなことはない。私事だが、股関節と頚椎に持病のある私は、整形外科を患者として受診するから健康保険証はつねに携帯している。

「マイナ保険証のどこが問題?」に答える本

それでもマイナ保険証を慌てて作ろうと焦っていないのはなぜか。マイナンバーカードもマイナ保険証も、その取得や登録はあくまでも「任意」だからである。この法的たてつけが変わらない以上、これらを所持していない人を医療から排除することは、法的にも完全に不可能なのだ。

だからまったく慌てることはないのである。なんなら慌てて作ってしまったものの、マイナンバーカードをめぐるトラブルが後を絶たない現状をみて不安に思っている人などは、返納しても問題ない。そのようにマイナンバーカードを返納した人であっても、従前と変わらず保険診療を受けられるからだ。

先日、非常に面白く役に立つ書籍が出版された。『マイナ保険証 6つの嘘』(せせらぎ出版)である。著者は“哲学系ゆーちゅーばー”こと北畑淳也氏。この肩書きを見て、「信用できるのか?」と眉を顰める向きもあろうが、中身は至極真っ当。

マイナ保険証のどこが問題なのかわからない人こそ読んでほしいし、モヤモヤした気持ちを持ちつつも、周りの友人などに「なぜまだ作っていないの?」と嘲笑されたときにどう反論したら良いか困っている人にとっては、最適な指南書ともいえるだろう。

以下、本稿では同書の内容の受け売りをしつつ、現在の政府がおこなっている卑怯な「手口」と欺瞞をつまびらかにしていこうと思う。