産業と知力の空洞化が深刻に
ドイツの景気が急激に落ち込んでいる。主な原因として、高すぎるエネルギー価格、高すぎる税金、肥大した官僚主義、労働力不足などが挙げられている。
膨大な書類の処理に時間を取られ、高い電気で高い製品を作って、高い税金を払えば、当然、国際競争力は地に落ちる。煩雑な官僚主義は、多くがEU規制に起因するものだが、高い電気代のほうはドイツが自ら招いていることだ。税金、および社会保障負担も、ドイツはEUではベルギーに次いで2番目に高い。
労働力は、そうでなくても少子高齢化で不足しているのに、良い労働力が海外に流出しており、なおさら足りない。しかも、20年も前から問題視されていた学校の崩壊に歯止めがかからず、今や労働力の質も急激に低下している。
こんな状態なので、結局、誰もドイツに投資したがらず、それどころかエネルギー多消費型の基幹産業が次々とドイツを後にしている。以前は、たとえ製造工程を外国に出しても、企業の頭脳である研究・開発部門は国内に残すと言われたが、今ではそれさえ外国に出ていってしまい、産業と知力の空洞化が深刻な問題である。
ドイツの半導体大手も海外へ脱出?
当然、ドイツでは現在、倒産の波が止まらない。余力のある大企業は出ていけても、残された関連企業は生き残るのが難しい。連邦統計庁の8月発表の資料によれば、今年7月の倒産件数は前年比で13.5%増。今年の6月だけは例外だったが、それ以外はすでに23年の6月から1年間、コンスタントに前年比2桁台の増加が続いている。
かように不景気な話の重なるドイツだが、8月5日、ドイツ最大の半導体メーカー、インフィニオンが、ドイツ国内での1400人のリストラを発表。それに加え、さらに1400人を条件の良い工場に移動させると言ったので、衝撃が走った。
インフィニオンはフランクフルト証券取引所に上場しており、DAX主要40銘柄の一つだが、今年の4月から6月の売り上げは、昨年比で9%減、利益は半分に落ちた。それもあり、今年の6月の初めにも500人を解雇している。
売り上げ下落の原因は、EV車の売れ行きが落ちたためだが、実は、同社はマレーシアのクリム(ペナン島に近い本土側)という場所に新工場を建設中で、すでに第1期工事が完成し、さる8月8日には開所式が行われたばかりだ。すべて完成するのは26年の終わりか27年の初めの予定で、投資額は合計20億ユーロ。