組織・人事改革のスペシャリスト集団であるイマージェンスは、顧客に対し「ホウレンソウサーベイ」なるサービスを提供している。上司と部下の関係性を調べれば、チームの状態がわかるという。理想のコミュニケーションを聞いた。

部下が報告をしぶる

イマージェンス社長 
桑畑英紀氏

原因はたいていその上司本人の誤解にあります。ホウレンソウは部下から上司への一方向のものだという思い込みです。

ホウレンソウの意味を紐解くと、報告は「結果や経過を相手に告げること」ですが、連絡は「情報や気持ち、考えを互いに伝え合うこと」。相談は「問題・課題について互いに意見を出して話し合い、何らかの解決策を導くこと」ですから、双方向が基本。しかし実際には双方向の連絡や相談になりにくい。

たとえば、課題解決の進捗を聞くときに、部下の考えや悩みなどを汲み上げず、納期と結果だけに関心を示す。「とにかく来週一杯で話をつけて報告してくれ」と。すると部下は、ホウレンソウを上司がラクにマネジメントするためのものだと感じ、意見交換の連絡も、課題解決の相談もする気にはならないでしょう。

部下をコントロールするためのホウレンソウも要注意です。「もう少しまとまった仕事を任せてほしいな……」と感じ、その能力もある部下に、一方的に「○○はこうやって、△△はこうやって。報告書も頻繁に出すように」と細かすぎる指示を出して従わせ、形式的な報告を求める。これでは部下の自主性は育ちません。

部下がホウレンソウしたがらないのは、その双方向性を無視しているからです。

組織力の強化を図る際、われわれは社員をとりまく行動環境を分析します。社員は自立的か服従的か。誇りを持っているか劣等感が強いか。会社と社員の信頼関係は成立しているのか単なる契約関係か……。これらはすべて行動環境が決めています。この行動環境を分析し、社員にとってプラスになる要因を緑、マイナス要因を赤に分類していくのです。

赤い要素が増えるほど「部下が主体的に行動できない不健康状態」になります。実際、不祥事を起こした会社を分析すると、ほとんどのケースは真っ赤でした。

行動環境は、人事・報酬制度、意思決定のプロセス、組織の構造など、さまざまな要素が絡んでつくられますが、一番大きなウエートを占めるのは、上司と部下のコミュニケーションです。いいホウレンソウで緑の行動環境にできれば、社員は自律的で活性化した状態になります。

いったい何のためのホウレンソウなのか? これを取り違えると、先に挙げた例のように、ホウレンソウは「上司のためにやらされるもの」でしかなくなり、行動環境は悪化していきます。

ホウレンソウの意義は、管理だけでなく、部下の士気を上げ、成長を促すという視点からとらえる必要があります。報告が上がったら問題や課題を一緒に話し合って解決策を探る。それによって部下に「自分では気づいてないことを考えさせてもらったな。相談してよかった」という納得感を与える。これが大事です。

私の経験から言うと、いい上司は部下に対してもホウレンソウをしています。上司の立場だからこそ得られる情報を共有したり問題を相談し、部下からうまく情報とやる気を引き出しているのです。

「ホウレンソウしてよかった」と感じている部下は、執拗に命令されなくても、いいことも悪いことも自分からホウレンソウするものなのです。