ここぞという大事なところで100%の成果を出すには何が必要か。昨年の甲子園で、慶應義塾高校に107年ぶりの優勝をもたらしたメンタルコーチの吉岡眞司さんは「実力を出し切る第一歩は自分の心の状態を知ること。振り子のようにプラスとマイナスを行ったり来たりする人間の心は、簡単な方法でコントロールすることができる」という――。

※本稿は、吉岡眞司『強いチームはなぜ「明るい」のか』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

拳を突き上げる人たち
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心はプラス・マイナスを行き来する

どんな場面でも自分の持てる力を100%発揮し、成果を挙げられるようになる、そのための第一歩は、まず自分の心の状態を知ることです。

私たちの心は、さながら振り子のように前向きな気持ち(プラス)と、後ろ向きな気持ち(マイナス)を絶えず行ったり来たりしています。気持ちがプラスの状態のときは何をやってもうまくいくように感じますが、反対にマイナスのときは何もかもうまくいかないように感じてしまいます。

この心の振り子の状態は、私たちの思考と体調に大きな影響をおよぼすことがわかっています。

「このピンチで失敗は許されない……」
「ミスをしてしまった。上司にどう伝えよう……」
「大事な面接を前に、緊張している。どうしよう……」

このようなネガティブな感情に襲われているときには、自分に過度なプレッシャーがかかってしまい、自分本来のパフォーマンスが特に発揮できなくなってしまいます。

鉄棒の訓練をする男性
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しかし、一見、悪者のように思えるネガティブな感情も、私たちが生きていくうえで必要なものなのです。

人間はこれまで、命の危険と隣り合わせだった時代を長く過ごしています。農耕時代、いやそれ以前の狩猟時代の頃から、私たちの遠い祖先は、生きながらえるために身の回りに危険なものがないか、常に先を見越して安全を確保することが求められていました。当時の人間にとって、ネガティブな感情や感覚は危険から身を守り、生きていくために不可欠なものだったのです。

だから、不安を感じたりストレスを過敏に感じたりするのは、人間として当たり前のことであり、それ自体を否定したり悲観する必要はありません。いわば私たちの本能のようなものですから。

話を戻すと、大事なのは、心の振り子は常にプラスとマイナスを行き来するものであり、それが私たちのパフォーマンスに影響をおよぼすというメカニズムを理解すること。そのうえで、大事な場面で感情をプラスの状態にすることです。

自分の感情を客観的に把握し、セルフコントロールする方法を身につけることで、「あ、今不安を感じているな」「緊張しているな」という場面でも心の状態をポジティブに変えられるのです。