「ソニーを支える=アップルを支える」という理由

林宏文著、野嶋剛監修、牧髙光里訳『TSMC 世界を動かすヒミツ』(CCCメディアハウス)
林宏文著、野嶋剛監修、牧髙光里訳『TSMC 世界を動かすヒミツ』(CCCメディアハウス)

(*2013年からマーク・リュウ(劉德音)と共にTSMCのCEOを務める)シーシー・ウェイ(魏哲家)は、日本は生産コストが低い場所ではないと言う。その日本に工場を設置する理由は「ある顧客をどうしても支えなければならない」からで、この日本の顧客とは、TSMCの主要顧客のサプライヤーでもある、ソニーだ。

ソニーは世界最大のイメージセンサー(CIS)サプライヤーで、アップルにCISを提供している。そのアップルはTSMCの営業収入の26%を占める最大顧客で、アップルのスマートフォンやタブレットには相当数のCISが使用されているため、もしCISが手に入らなくなったらアップルはこうした製品を販売できなくなる。つまり、ソニーを支えるために日本に工場を構えるということは、アップルを支えるのと同じことなのだ。

※「*」がついた注および補足はダイジェスト作成者によるもの

コメントby SERENDIP

日本は1980年代、半導体市場で世界を席巻した。しかしその後、日米半導体貿易摩擦などを経て、現在は米国や韓国に大きく水を開けられている状況だ。ただし、日本は今なお川上の設備と材料、基礎研究分野に優れており、これは、製造とパッケージング・検査とIC設計に強い台湾と補完関係を構築できると著者は述べる。さらに、米中の対立が続くなか、日本と台湾の協力関係はより密になっていくというのが、著者の予想だ。直近、国内の半導体産業は盛り上がりを見せている。台湾との連携も含め、今後の日本半導体の復活に期待がかかる。

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