「バルミューダ」が市場調査を絶対にしない理由

周りには「思いつきですぐ決める」というように映ることがありますが、それは一部分しか見ていない、いわばただの凡人の意見。

目に見える天才の言動の背景には、その何十倍、何百倍もの思考が常に動いていて、それが感性を養うことにつながっているのだと思います。

超一流の凡人を目指すのなら、まずは天才が「やりたい」と言ったことに対し「きっと、この先に何かが見えているに違いない」と信じ、ぜひ最後までやりとげてみてください。振り返ると「こんな山を登ってきたのか」と感動できる瞬間が、必ず訪れます。

少し余談になりますが、成熟市場と言われている家電業界において目覚ましい成長を遂げた「バルミューダ」は、市場調査をしないことをモットーにしているそうです。

通常、商品開発をする際には入念に市場を分析した上でヒットしそうな製品を予測します。

ところが、バルミューダは「自分たちが世に出したいもの」を中心に考えているといいます。

まさに、論理よりも感性で動いて結果を出している良い例だと思います。

そもそも、人間は理性よりも感情で動く生きものです。「論理的に考えなければ」と思えば思うほど、つまらない慣例をなぞる、通り一遍のアイデアしか出てきません。

これでは凡人の思考を抜け出せないまま。天才は、感性で動く。常識はさておき、自分がやりたいことに真剣に取り組むのです。

その姿は、まさにアーティストのようでもあります。

ニュース番組は毎日録画で倍速、YouTubeは新幹線の移動中に

私はあるときから「役職も何もいりません。私は社長“付《ヅケ》”ですから」と、可能な限り社長の近くにいるようになりました。天才がどんな情報に触れ、どんなことを考え、どう解釈し、未来を描くのか。それを深く知りたいと思ったからです。

天才は常にインプットをしています。

地下でスマートフォンを使用する若い男
写真=iStock.com/loveguli
※写真はイメージです

例えば、「ニュース番組は毎日録画をして倍速で見ている」とさらりと話し「YouTubeにハマっていて、新幹線の移動中はよく観ている」といろいろな人に楽しそうに伝えます。

さらに「最近、縦読みのスマホ用マンガが伸びているらしいね」など、普段の会話の中で頻繁にトレンドに注目した発言が出てきます。

また、気になった本があればすぐにメモを取り、秘書に「この本を買っておいてほしい」と頼んでいる姿もよく見ます。何にでも好奇心を持って先入観なく飛び込めるところは、天才性を感じさせる一つの側面です。

メモを取るのは本についてだけではありません。寝ていても、新幹線の中でも、音楽を聴いているときでも、どんなときでもアイデアが浮かんだら、LINEにメモを残しています。

そして、関連する情報がないかを調べてつながりを見つけたら、すぐに社内で共有してくれます。実際にそれがベースとなって動き出したプロジェクトがいくつもあります。