※本稿は、和田秀樹『コレステロールは下げるな』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
健康長寿になるために必要な食生活とは
日本人は“脂”が足りていません。コレステロールも脂の一種ですが、そうした“脂不足”も日本人の低栄養の原因になっているようです。
どんな脂がいいのか? というのは第3章でも話しました。くり返しになりますが、やはり「満遍なく摂る」のがいちばんだと思います。
食品は様々な成分で構成されています。そして人間が活動したり、体を維持したりするには、様々な成分が必要です。偏った食品や単一成分のサプリを摂り続けていたら、体内では何らかの不足が出てきます。体にとって、それがよくないことは、言うまでもないでしょう。
「トランス脂肪酸はよくない」と悪評が立ったマーガリンも、最近では見直し運動が始まっています。トランス脂肪酸は工業的につくられるものもありますが、もともとは牛や羊などの反芻動物の胃に棲む微生物がつくり出した天然の成分です。食べても問題ないどころか、必要な成分でもあるのです。
どんなものでも足りないのがよくない、というのは栄養学の基本です。
多いことの害ばかりが指摘されていますが、本当は足りないことが大問題。
「○○がいい」「△△が悪い」と食べ物の一側面だけを取り上げて強調するコマーシャリズムも、日本人の“偏った食事”に拍車をかけている気がします。
唐揚げ弁当より幕の内弁当
日本人はとかく情報に流されやすい傾向があります。「フードファディズム」という言葉をご存じでしょうか。フードは食品、ファディズム(faddism)は「流行かぶれ」という意味です。誉め言葉ではなく少しバカにしたニュアンスが込められています。「情報に踊らされ、妄信的に“よい”と言われる食品を食べる」と。
フードファディズムが悪いとは言いませんが、それによって食事が偏るのは、やはり問題だと思います。栄養が偏ってしまうからです。
偏食の影響は、後になって出てきます。しかも、年を取れば取るほど、栄養の偏りが大きく響いてくるのです。私が「満遍なく食べましょう」と言うと、当たり前過ぎて面白くないかもしれませんが、でもやはり、それがいちばんなのです。
できれば一汁三菜より“一汁十菜”、おかずが一種類の唐揚げ弁当より“幕の内弁当”、複数の食材を煮込んだ“スープ”や“鍋物”など、多くの食品から栄養を摂ることを考えたほうがいいと思います。
今の80歳代や90歳代、100歳超えの人たちは、戦中にひもじい思いをしたこともあってか、戦後は何でもガツガツ食べてきた人たちです。それが日本“長寿”をけん引してきたことは確かでしょう。
でも今後はわかりません。自ら偏食と低栄養を選ぶ人たちが、健康で長生きできるという保証はありません。