これが「当たり」だった。たまたま私の体に合っていたのだと思うが、夕方に点滴を受けて、翌朝には、思考能力が戻り、ふつうに会話ができるようになった。
もちろん、新薬は「気付け薬」のようなもので、抗がん剤ではないから、がんの治療に直接つながるものではないのだが、この新薬で一命をとりとめたことは事実だった。
そして、その1週間後から、私は東京の総合病院に2週間の入院をすることになった。がん治療のためではない。治療ができるように、まず体力を取り戻すためだ。
免疫量はふつうの人の5分の1に
実際、私の体はボロボロだった。入院当初は、車椅子で移動していた。そして、血液検査の結果、私の免疫量は、ふつうの人の5分の1くらいに落ちていた。とても危険な状態だ。そんな状態で新型コロナなどの感染症にかかったらイチコロだ。だから、とりあえず隔離して、体調を戻す必要があったのだ。
それまでの人生で、私は入院したことがなかった。治療の準備で、一晩だけ入院したことはあったが、それ以外、医師から入院を勧められても、全部拒否してきた。
そもそもあれこれ拘束されるのが大嫌いなうえに、食事の選択肢もなくなり、好きなたばこも絶対に吸えない。そんな生活は耐えられない。
ただ、このときは命がかかっているから「2週間だけ」という条件で、入院をすることにしたのだ。