1人5000円で女性参加者29人を動員

1、被告人はイベントの司会などの仕事をしていた。ある社長と20年来のつきあいがあり、その女性秘書とは親友だった。

2、社長の知り合いが参議院議員選挙に立候補することになった。社長は「応援して当選すれば事業拡大になる」と考えた。

3、東京都中央区にあるAビルで激励会を、永田町のBビルで決起集会をやることになった。社長は秘書に「女性参加者が少ないので動員してほしい」と言い、1人当たり5000円を配るよう指示した。

4、秘書は被告人に「よかったらお友達連れてきてくれない?」と声をかけた。1万円札を複数枚渡し、5000円札に両替しておくよう言った。被告人は親友の役に立ちたいと思った。

5、「もしよかったらいっしょに行かない? お礼が出るから」と被告人は友人・知人らを誘った。会場では投票を呼びかけるチラシなどが配布された。最後に「頑張ろう!」の唱和などがあった。

6、被告人が誘った女性は合計29人。Aビルに集まったのは3人で、被告人はいっしょに食事に行き、5000円札入りの封筒を「はい、これ、お礼だから」と渡した。Bビルに集まった26人にも渡した。被告人自身も、2つの会場分で合計1万円を受け取った。

「きれいな人を集めてほしいと…」

【裁判官】いま検察官が述べた起訴状の内容に、どこか違っているところはありますか?

【被告人】間違いありません。

起訴事実を認める「自白事件」である。ただ、裁判官が一点、確認した。

【裁判官】4人で食事に……自分プラス外3名で、合計2万円……○○、□□に各5000円……残り5000円は、もう1人、受供与者がいるが、その者は選挙権がないと?

外国籍、ではない。年齢的に選挙権がないのだった。選挙権とか関係なく、被告人は女性たちを集めたのだ。

ホールで演説
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書証(証拠書類)の要旨を告知して検察官の立証は終わった。続いて弁護人(どこか上品な中年女性)の立証だ。書証も情状証人もなく、すぐに被告人質問が始まった。

【弁護人】選挙には。

【被告人】全く興味ありません。仕事でウグイス嬢を頼まれることはありますが。

【弁護人】動員は。

【被告人】もっとたくさん呼んでほしいと言われました。

【弁護人】華やかな人を、と?

【被告人】女性で、きれいな人を集めてほしいと……