逆にコレステロールを下げると死にやすい

健康診断をした結果、「コレステロール値が高いですね。脂の多い食事は控えてください」と言われたことのある人もいるでしょう。「このままだと心筋梗塞になりますよ」と脅された人もいるかもしれません。しかし、この医師の助言は間違っている、と言えそうです。

事実は逆かもしれません。

コレステロールを下げると心筋梗塞になりやすい。がんにもなりやすい。脳血管系の病気にもなりやすい。死亡率も高まります――。

これは私が長年、高齢者医療の現場にいて実感していることですが、その根拠となるデータが実際に出されています。

【図表2】総コレステロール値と死因(J-LIT一次予防群)
コレステロールは下げるな』(幻冬舎新書)より

この図(図表2)は柴田博医師からお借りしたものですが、コレステロール値の低いほうが総死亡率はグンと高くなっていることが、一目瞭然です。

え、本当? と目を疑いたくなりますよね。でも、事実です。

これは5万2421名を6年間追跡研究した結果です。対象になったのは「総コレステロール値が220mg以上で、シンバスタチンという薬を投与された人」です。全国の「35~70歳の男性」と「閉経女性」と言いますから、この本の読者層にも近いかもしれませんね。

注目すべきは、血中コレステロール値が180mg未満の群の死亡率が高いことです。コレステロール値が200~279の3つの群では、死亡率はほぼ同じですが、199以下になると高まり、180未満になると一気に高くなることがわかります。

また「がん」や「事故・自殺」で死ぬ人は、コレステロール値が低いほど増えていることがわかります。そして「コレステロールを下げよ」と言われるいちばんの原因である心筋梗塞も、180未満になると増えているのです。

あなたが信じている「健康常識」は間違っている

ちなみに現代の医療では「総コレステロールの基準値」は、以下のように定められています。もちろん私は、この数値は信じていませんが。

【基準値】140~199mg/dL
【要注意】200~259mg/dL、または139mg/dL以下
【異常値】260mg/dL以上

いかがでしょう? そして、みなさんはどの範囲ですか?

例えば、健診の結果、コレステロール値が240mgの人がいたとします。医師は数値を見て「要注意ですね。異常値にも近いので、基準値まで落とすために薬を出しましょう」と言います。でも、その言葉を鵜吞みにして、コレステロール降下剤を服用することは、実はとても危険なことなのです。

先の図表2では280mg以上の群は、心筋梗塞による死亡率が増加しています。しかしこの群には「家族性高脂血症」という先天性のリスクを持つ人も多数含まれており、この人たちを除くと有害性が薄れます。

検査の数値だけを見て、なんでもかんでも「コレステロールを下げよう」と思うのではなく、持病の有無なども併せて判断すべきなのです。

みなさんは、これまで言われ続けてきた“健康常識”なるものの影響で「コレステロールは害悪」と信じ込まされています。しかしコレステロールを下げてしまうと、がんや事故・自殺だけでなく、血管系の病気も増えていくのです。