人口移動が激しい東京都ならではの選挙戦略

一方で、蓮舫氏については共産が前面に立って支援を行っている。

人口移動が激しい東京都では、そもそも都内の民間企業などに勤めている人たちが千葉や埼玉、神奈川などの近郊から通勤していて、都内の投票権を持ってない場合も多いため、連合による集票力は他の地域に比べて弱くなってしまいがちだ。

それよりも、市民運動の参加者や共産党の支持者など、リベラル層の票のほうが稼ぎやすいという事情があり、立憲の東京都連は共産との選挙協力に積極的で、連合とは距離を取る傾向にある。

こうしたことから、蓮舫氏は「立憲共産党」とも揶揄されているわけだが、その中で国民民主都連と連合東京は小池氏の支持に回ったわけだ。

ただ、小池氏は自民からの支援も受けているため、小池氏を応援することは自民と一体だと批判されかねない。

現在、自民党は裏金問題で大逆風となっており、その再発防止のために行われた政治資金規正法の改正も不十分ということで、支持率は現在進行形で低迷しており、野党各党は自民との対決姿勢を強めている。

公約に「労働政策」を盛り込んだワケ

実際に、国民民主も19日の党首討論では、玉木雄一郎代表が岸田文雄首相に対して辞職を求め、20日には立憲が提出した内閣不信任決議案に賛成し、岸田政権に対してノーを突き付けた。

こうした中、連合東京も都知事選において傘下の産別組織が蓮舫氏を支援することを容認する考えを示しており、それが今回の情勢調査では国民民主党支持者の投票先の分断に繋がったと言えるだろう。

こうした流れに対して、蓮舫氏も支持を広げようとしている動きが見て取れる。

街頭演説する蓮舫氏(2024年6月23日、錦糸町駅前)
筆者撮影
街頭演説する蓮舫氏(2024年6月23日、錦糸町駅前)

蓮舫氏は都知事選の公約として「7つの約束」を掲げたが、その1つ目に「現役世代の手取りを増やす」という政策を掲げ、具体的には「新しい条例で、東京都と契約する企業に、働く人の待遇の改善を要請する」ことや、「東京都の非正規職員を、専門職から順次正規化するなど処遇改善を進める」ことなどを盛り込んだ。

これらの労働政策は連合東京や国民民主支持者をターゲットにした内容とも言え、蓮舫氏がリベラルの岩盤支持層だけでなく、さらにそこからパイを広げようとしていることが分かる。

選挙戦の中でこの蓮舫氏の戦略が功を奏するか否かが、小池氏と蓮舫氏の勝敗を分けることになるだろう。