メーカーが導入した指紋認証も意味がない
加藤さんによれば、車種によっては鍵がなくても手を伸ばすだけでCAN-バスに届いてしまうものもあるという。こうした特定車種の盗難に自動車メーカーも本格的な予防策に乗り出し、指紋認証による開錠システムを導入。しかし、加藤さんによればそうしたシステムも役に立たない厳しい現状があるという。
「大手自動車メーカーがエンジンをかけるプッシュボタンに指紋認証システムを導入しました。しかしCANインベーダーは指紋認証をすっ飛ばしてエンジンをかけることができてしまうシステムなので、残念ながら指紋認証システムは意味がないんです」
加藤さんは「そのCANインベーダーに輪をかけて手ごわいツールが登場し始めている」と指摘する。そのツールは「GAMEBOY(ゲームボーイ)」と呼ばれるもので、まさにその名の通りゲーム機のような端末を使って窃盗犯は犯行に及ぶのだという。
窃盗ツール「ゲームボーイ」のこわい機能
「ゲームボーイはスマートキーから出る電波を使うのではなく車から出る信号を使うんですね。車からどの時点で信号が出るかというと、犯人はまずドアハンドルを掴んでガチャガチャってやるんですよ。その時点で信号が出ているんです。それをゲームボーイがキャッチして、その信号の情報を解析する。数分から40分程度で解析が完了すれば、もう鍵として使えるということですね。1台のゲームボーイで20台分の鍵データをメモリーできるとされています」
加藤さんによれば、ゲームボーイでは最大50メートル離れた場所でも鍵データの解析ができるのだという。つまり、犯人が車から出る信号をドアノブを操作してキャッチしたら、すぐさまその場から立ち去れるという窃盗犯にとっては嬉しいアイテムとなってしまっているのだ。
こうしたゲームボーイなどを悪用する自動車盗難に私たちはどう立ち向かえば良いのか? 加藤さんは「やはり最新のツールでセキュリティを強化すること」の大切さを強調する。