警察組織だけでは被害を止められない
ルフィ事件に関して警察庁は匿名・流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」と名付けて取り締まりを強化し、全国の警察にトクリュウの動向をウォッチする捜査班を設置している。勝丸さんは、昨今の自動車盗難のようなトクリュウが関与する可能性が高い組織犯罪には、警察組織のみによる対策では限界があると話す。
「盗難車の輸出や実行犯の不法滞在にしても、税関や入管との連携が欠かせません。しかしながら、情報共有が迅速化されているかと言われれば、私は疑問が残ると考えています。統一の情報共有システムが未だ存在していないために、各当局と警察との情報共有に時間がかかる現状があります」
一連の自動車盗難の拠点になっているとされる「ヤード」。このヤードは古物営業法にもとづいて各エリアの管轄の警察に営業届が出されている。基本的には警察の許可を受けている業者が営業しているということになるが、勝丸さんは「警察はもう一歩踏み出すべき」と強調する。
「CANインベーダー」による盗難が主流に
「解体した車の部品などは、輸出する際には国内の自動車整備工場などを通過しないといけないんですね。盗難の多い自治体などでは『ヤード条例』もあるし、ヤードの営業は警察の許可が要りますから、警察は立ち入り検査を定期的に行っているんです。この検査を抜き打ちで頻繁に行うべきで、とにかく疑わしきヤードを叩くことが肝心」
いまや大規模な国際組織犯罪の様相を呈している自動車盗難。盗難の手口は年々巧妙化し、電子技術を悪用した手口が横行している。その代表格が「CANインベーダー」と呼ばれる器具を使った盗難だ。加藤さんはこのように解説する。
「CANインベーダーは車のネットワークの中心になる部分『CAN-バス』に特殊な機械を接続することで、鍵は開くしエンジンもかかるし全部使えるようになってしまう、いま一番多い自動車盗難の手口です」