共通点は「振込先の名義」がおかしいこと
この手の投資詐欺にはよく見られる共通点があります。それはFXの口座に入金する際の、振込先の名義がおかしいことです。個人名義だったり、FX取引している会社とは別の業者名だったりします。
普通に考えたら不審に思うはずなのですが、「海外だから」とか「いったん自分が預かって投資するから」など違和感を持たせないような口実を作ってきます。被害者の方も「大儲けする方法見つけた!」と興奮しているタイミングですので、お金を振り込みたい気持ちが勝ってしまうのかもしれません。
ですが、ここで踏みとどまってほしいのです。ここで気づいて被害を免れた人ももちろんいます。「個人名義だったら振り込まない」。このキーワードを肝に銘じておいてほしいのです。
著名人やその関係者を名乗る投資詐欺が急増中
投資詐欺については、著名人本人や関係者を名乗って勧誘するパターンが、このところ急増しています。相談件数で言えば2023年度は前年度の約10倍にせまる勢いです(参考:国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」2024年5月29日公表)。
例えばこんな相談です。前述のFX投資詐欺と多くの共通点があります。
SNSに海外の女性からメッセージが届いた。女性は有名投資家のめいで自身も会社を経営しているとのことだった。その女性から「絶対に負けない投資家を知っていて自分も投資で儲かったので、あなたも儲けてほしい」と言われFX投資のアプリをダウンロードした。FX投資の売買タイミングを教えてくれるアプリで、1回につき10万円から15万円程の金額をアプリ内に作った口座に振り込んだ。総額200万円程を投資したところで残高が1300万円になった。
利益が出て喜んでいたら、「不正な行為があった可能性がある」と言われ、口座が凍結され、その解除に270万円が必要と言われた。残高が1300万円あると思っていたので、カードローンで借り入れをして270万円を振り込んだが、その後、女性とも連絡が取れなくなり、アプリも開かなくなった。詐欺ではないか。どうすればいいか。
(2023 年3月受付 50歳代 男性)
森永さんのような有名人を広告で無断使用した投資詐欺は、一部にすぎないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。“先生”や“師匠”と名乗ったり、有名人の親戚やアシスタントを装ったり、そのバリエーションは幅広く存在します。
支払ったお金は取り戻せないことがほとんど
国民生活センターによると、2023年度に寄せられたFX取引に関する相談で、すでに支払ってしまったお金の平均額は540万円にのぼっています。悲しいことに、この手の投資詐欺は取り返すことがほとんどできません。
投資において最も重要なことは詐欺に遭わないことです。利益をあげる方法を知ることが一番ではありません。現状のSNS広告は、審査が十分に機能しているとは評価できない状況です。さまざまな情報源があるなかで、詐欺との距離感が近いことは否定できないでしょう。
筆者も新NISAをやっていますが、始める前には図書館で10冊程度の本を借りて読みました。安くすませたいからではなく、選書されている分、詐欺に遭いにくいだろうと考えたからです。この方法なら絶対安心というわけではありませんが、投資に興味が湧いたとき、どう行動したら詐欺に遭う可能性が下がるのか、そういう視点を持つことも大事かなと思います。