近年取り上げられた盗掘のニュース

中国側の報道を検索してみると、2020年代に摘発された恐竜化石の盗掘のニュースだけでも、たとえば以下のようなものがある(年齢は当時、以下同じ)。

〈【2020年12月】 河南省三門峡市盧氏県范里鎮で男性4人が逮捕。現地在住で当時42歳の毋××が親戚で32歳の範××とともに山中での盗掘を図り、12月2日に地元の村人の王××(55歳)と王×(52歳)の助けを得ながら雪山のなかで盗掘を決行。6日後に地元の派出所によって逮捕され、恐竜の化石とみられる岩石9・5キログラムとスコップや輸送用のワゴンなどが押収された(2020年12月17日付『大河報』)。〉

〈【2022年7月】 広東省河源市東源県東方紅村の村人・王が同市源城区の公安局により逮捕され、恐竜のタマゴとみられる化石が含まれた岩石23点(タマゴの化石160個)が押収された。捜査によると、王はすくなくとも2020年から、コミュニケーションアプリ『微信』の朋友圏(コミュニティグループ)やECサイトの『アリババ』『咸魚』などを通じて、「工芸品の模型」という名目で盗掘化石の販売を繰り返し、20万元(約400万円)を売り上げていたとされる。化石は白亜紀後期のものとみられている(2022年7月13日付『中国新聞網』)。〉

〈【2023年5月】 内モンゴル自治区バヤンノール市ウラド中旗で地元公安局が近隣の陝西省・甘粛省・寧夏回族自治区まで捜査網を広げた大規模な盗掘摘発作戦を実施した結果、容疑者6人を逮捕。242キログラムの化石を押収した。その後のバヤンノール自然史博物館の調査によれば、化石は約1億年前~約6600年前の白亜紀後期のものであるとみられている(2023年5月24日付『中国警察網』など)。〉

商業流通全体に厳しい態度を取る研究者も少なくない

もちろん、このようにして現地の報道に登場するのは摘発が成功した事例のみであり、盗掘ビジネス全体から見れば氷山の一角にすぎない。以前よりはかなり「マシ」になったとはいえ、中国における盗掘問題は相変わらず深刻だ。

科学的価値が比較的低い化石が、ミネラル・ショーを通じて商業流通すること自体は、古生物や恐竜に興味を持つ一般人の裾野を広げる効果もある。だが、なにをもって「売ってもいい」化石であると判断するかの線引きは非常に曖昧だ。こうした商業流通全体に厳しい態度を取る研究者も少なくない。

いまこの瞬間も、貴重な発見がヤミに葬られているかもしれないのだ。

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